ペン森通信
新聞記者は文春に負けて悔しくないのか
『日本人の社会病理』(山本七平・小此木圭吾/講談社文庫)という対談本を寝どこのベッドで眠り薬代わりに読んでいる。まえがきの書きだしが「戦後37年。『われわれ日本人もたいしたものだ』。だれもがなんとなくそう思う時代になった」とあるから、ぼくが新聞記者になった年に買った本のようだ。ようだ、というのはまったく記憶してないからである。内容はユ典型的なダヤ人フロイトのエディプス・コンプレックス理論からはじまる。

小此木の相手の討論者山本七平は『日本人とユダヤ人』を著したときは、イザヤ・ベンダサンという著者名だった。この著者はだれであるか、ずいぶんと話題になったが、山本の名前が知られるようになったのは、のちのことである。ヨーロッパ文化の源流に詳しく頭脳明晰なこの思想家は一種のブームとなるが、遠藤周作は「いざや、便出さん」とからかった。英語能力が高校生レベルだのとか誤訳が多いとか悪意に満ちた批判もあった。

ぼくはギリシャ神話や旧約聖書についてはほとんど知らないからペン森生が読むべき本として『「空気」の研究』を挙げておきたい。片道燃料で特攻出撃した戦艦大和を例にとって、日本人が一定の方向に流れるのは理屈ではダメなことだとわかってはいてもストップはきかず勢いは止められないまま流れてしまう、という国民性を鋭く突いている。ぼくは学生時代「日本人とは何ぞや」というテーマを3年くらい追求した。高度経済成長期、ヨーロッパへ行き日本人について連載記事を記事を書かせてもらった。

これが日本人論、ひいてはなぜ日本は戦争をはじめジャーナリズムは戦意高揚に懸命になったかに繋がるのだが、戦争体験者山本七平の以下の著作も空気の研究同様文春文庫で購入できるので一読を勧めたい。『ある異常体験者の偏見』『私の中の日本軍』『一下級将校の見た帝国陸軍』の3冊だがとくに『一下級将校の見た帝国陸軍』を推奨しておきたい。自衛隊の自殺者がときどき新聞記事になるが、軍隊がもつ特異な体質は同じだとみえる。

もとよりそれは新聞社にも通じるものがあって、いくらPCが導入されても、精神性によって形成される社風や旧態依然とした生活風土は同じである。いま『そして、メディアは日本を戦争に導いた』(半藤一利・保坂正康/文春文庫)も読みさしである。半藤と保坂は近現代史の在野の専門家だがご老体なので若いひとに厳しい。いわく、日本史をやってないから2・26事件や5・15事件を知らないと言っておきながら、その事件についての質問をしてくる、と。

要は若い記者たちの勉強不足を嘆く一方で、新聞の戦争時の商業主義を批判している。社長交代にまでつながった朝日の一連の不祥事の際、読売はここを先途と販売攻勢に打って出た。読売は部数を増やすどころか、新聞全体の部数減に拍車がかかる始末で、新聞の落ち目がいっそう明白になった。新聞の体質はもっと下品になった。朝日は調査報道班員を減らし、いまやすっかり迫力のない新聞になった。代わりに週刊文春が甘利大臣をクビにし、舛添を追放してくれた。

文春はわざわざ400円とか420円を読者が払って購入する。新聞は文春の調査報道にかなわない。新聞記者が悔しがっていまに見ていろ、こっちだって度肝をぬく独自記事を書くからな、と奮起する気配はない。文春にやられっぱなしの上に悔しがらないのだから余計に情ない。


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