ペン森通信
空気に染まって流されるな
一番若くて70歳という会合に先週土曜日参加した。参加者11人のうち酒飲みは7人、さすがに喫煙者はいなかった。ぼくが社会部にいた当時の社会部長の卆寿を祝う会。この種の老人の集まりには病気や薬自慢がつきものだが、平安時代の源氏物語の話がはずんだ。だれが訳した源氏物語だかわからないが6巻までいま読み進めているという者がいた。ぼくは読んでないが、光源氏の女遍歴がとっかえひっかえだったことは知っている。

宮本常一の『忘れられた日本人』の中におさめられている「土佐源氏」を読めば、源氏物語が好色な作品であることくらいはわかる。橋の下に居住する目の見えない老人の思い出話を聞き書きした「土佐源氏」もおおらかな性遍歴だから、平安時代の本家本元もさぞかしおおらかだろう。いまどきの窮屈さ息苦しさとは無縁のものにちがいない。出席者のだれかが「むなしい小説」と評していたが、これは老境に達した者の感壊である。

出席者11人は元部長が陸士出身だが、東大法卒という資料もある。本人に確認したことがあるが「陸士出は希望の大学学部のどこへでもいけた。ぼくは東大法の希望を出してそのままにしておいた。それが残っているのだろう」とのことだった。戦前の最難関陸軍士官学校は戦争中も優遇されていた。会合の席で元部長は「陸士にいたおかげで食事に困ることはなかった」と振り返った。戦中敗戦直後の食糧事情の話が出たときであった。

集まった老人たちはかつてのゴルフコンペをしていたグループだが、泊まりがけでゴルフをするほど仲がよかったのはいっしょに苦労した社会部ロッキード事件取材班の仲間だったからである。ところがぼくはその取材班には加わっていない。社会部員を実名で登場させた『毎日新聞ロッキード取材全行動』(講談社=絶版)という本のまとめ役だったにすぎない。この本は映画化やテレビ2時間ドラマ化の計画があったが、立ち消えになった。

映画は監督やキャストまで決まってぼくは台本を預かっていたがなくした。テレビ化は取材班の主だったメンバーが持っていたカバンや筆記用具、編集局各部の配置など3日間にわたって取材を受けた。実現しなかったのは政治的な圧力があったか自粛かは知らないが、なんらかの政治的な作用によってだめになったのは確実だろう。なにしろ総理大臣をしていた田中角栄が東京地検に逮捕された大事件だった。「政治とカネ」問題のはじまりだ。

元社会部長は剛毅な人だ。当時の社会部員もホネがあった。最近のペン森生とそこが大いに異なるし、ぼくが一番気がかりなことでもある。ぼくらの時代は社会の矛盾や政治に対して鋭く反応した。20期生は優しい。素直である。が、面接官はどう思うだろうかと気に病みすぎる。自分を出すより相手に合わせようとする。大きいものにはそんなに同調しなくていい。自分の考えていることを言って自分らしさを表現すればいいのだ。

権力者の考えそうなことを忖度している意見に疑いもなく同意するのは危険である。山本七平に『「空気」の研究』という名著がある。論理では抗えない空気が醸成されるとみんながその空気に流されてゆく。それを戦艦大和の特攻出撃を例にとって記述している。メディアは安倍の空気に染まっていないか。内定に焦るメディア志望者よじっくり考えろ。



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