ペン森通信
後藤健二さんを悼む
 ついに後藤健二が殺害された。政府は1カ月かけて政府の対応を検証するというが、イスラム国(IS)には、理屈や情が通じるとも思えないから答えはなかなか見出せないだろう。ただ、安倍外交が利用されたという指摘にどう触れるかである。安倍が中東訪問中に表明した2億ドルのイスラム国対策支援と身代金の額が同額なのはなぜか。もうひとつ現地対策本部をイスラム国と交渉ルートを持つ親日トルコになぜおかなかったのか。
 
 2億ドルの支援は日本人2人を拘束しているイスラム国を完全に敵に回す刺激になったのでは。さらにアメリカに同調して空爆にも参加している有志国ヨルダンにどうして現地対策本部を設けたのか。日本にとってアラブは遠い存在だったが、今回の事件とイスラム国の「今後も(有志国)の日本人を標的にする」という恫喝によって、すぐ近くの存在になった。イスラム国はISと表記されることも多くなったが、怖い存在に変わりはない。

 政府の検証が安倍の誤算にどの程度踏み込むかあやしいものだが、ペン森ではイスラム国の残虐非道を少しでも知るためにきのうの名画鑑賞会では急遽、予定を変更して北野武のバイオレンス映画を観た。具体的な人殺しの「アウトレイジ」である。これは稀有な暴力・拷問至上主義のR-15指定映画だ。イスラム国もまた人殺しで世界に蛇蝎のように嫌われている。具体的にひとを殺すということがわかるということで脅威となっている。

 あまりに激しい血なまぐさい暴力と目をそむけてしまいそうな拷問。歯科の椅子にあおむけになって治療中のやくざ幹部の口の中に歯科の治療用の器具を押し込んでひっかきまわし、口から血を噴き出すシーンを見た1人の女子は半泣きになって見ちゃおれないと外へ出た。拳銃を派手に撃ってひとを殺し、たしかに女子には耐えられないシーン満載の映画であるが、ぼくは日本の戦国時代も似たような残虐が日常だったのでは、と考えていた。

 イスラム国はネットに動画を投稿して世界中に拡散させる。そういう意味ではネット時代の犯罪だが、動画だからリアルである。一次大戦の末期から飛行機からの爆弾を投下する抽象的な人殺しがはじまった。操縦士には無差別に人殺しをしたという実感はあまりないかっただろう。至近距離の拳銃や刀剣は目の前で殺すから具体的だ。戦国時代や、あるいは人切り半次郎などが刀を振るって相手を殺害した幕末も具体的な殺し合いだった。

 対イスラム国有志連合の空爆も無抵抗の善良の民を殺している。抽象的だから殺せるのだろう。しかし、「人を殺してみたかった」という具体的なすぎる殺人も最近、日本では10代女子がやっている。斧でおばあさんを殺し1月27日19歳に逮捕された名古屋大1年生、昨年4月長崎県佐世保で同級生の15歳の女子をハンマーで殴って殺害した16歳の県立高校1年生。イスラム国にはひとを殺してみたいという心理の若者も加わっているはずだ。

 後藤健二は、戦争や内戦で家を失って避難民となった子どもや女性や老人の悲痛な叫びと声を代弁するジャーナリストだった。社員ジャーナリストは危険な地域にはほぼ行かないし、行かせない。われわれはかれが撮影した子どもや女性をNHKや民放の映像で見たはずだ。かれは、社員ジャーナリストの犠牲でもあった。ご冥福を祈る。
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