ペン森通信
あとは野となれ山となれ
パーティでスピーチを頼まれると気のきいたことをしゃべろう、と意気込むが、あらかじめ考えてメモまでして準備したことを話したことがない。考えてもいなかったことが口をついで出てしまう。採用面接から帰ってきた受講生が思っていたこととは別の内容を口走ってしまったと落ち込むのと同じで、ぼくも先週土曜日はそうだった。ぼくが主役の会なのでスピーチは計算していたが、まるで関係ないことをしゃべってしまった。

 いつものことなので落ち込みはしなかったが、なにをしゃべったかまるで憶えていない。用意した中身は雲散霧消した。酒のせいだけでなく、会場の私語ががやがやとうるさいうえに、マイクが本人の声をあまり拾わず、しゃべるのにコツを要した事情も加わり、伝えるのに難儀した。みな久しぶりの邂逅だから話が盛り上がるのは当然だ。旧友相集うという宴席の幹事をやったことがあるが、このときも講師そっちのけで私語が盛んだった。

それでも耳をそばだてて聴いてくれるひともいるもので、ペン森初の栄誉ある新聞協会賞をもらった読売・岩崎千尋記者の講話のあと、感想をもとめられたぼくは無罪になったゴビンダの連想から貧困問題に触れた。「日本には年収200万円以下のワーキングプアが1100万人いる。彼らを救済できるのはメディアと行政しかない」と。すると弱者に目を注いでいる女性記者と千葉県の市役所に転職して福祉課にいる男子からお礼を言われた。

ぼくもワーキングプアに近い年収だが、医者にかかっても自己負担は1割、都営地下鉄は年2万円払ってシルバーパスを使い無料、バスも都内はシルバーパスだ。知り合いの元電通マンはシルバーパスで都内のあちこちに出回って時間をつぶしている。高齢者には結構手厚い支援策がとられているものの、定年が60、65歳というのは人材資源の無駄だ、というほかない。この年齢はまだまだ働き盛りである。引退するには早すぎる。

ぼくが女子に興味をもったのは60すぎてからだった。最近の週刊誌はセックス記事の特集が際だって目立つ。ついに80歳からという特集も現れた。新聞の広告も「生涯現役」とか「いつまでもピンピン」とか「みなぎる活力」とか,そういうたぐいの薬品関係が増えた。高齢社会の反映なのだろうが、露骨すぎる。80歳でピンピン元気だったのは『レ・ミゼラブル』のヴィクトル・ユゴ―。87くらいで没したが直前まで絶倫だったらしい。

セックスについては名著『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイヤモンドが『知の逆転』(NHK出版新書)で「それは楽しいからだ」と解説する。生殖を目的としないでも人間だけはセックスができる。もうぼくには関係ないが、先週土曜日ぼくの椅子の上にだれかがコンドームをプレゼントしていった。薬品メーカーの男子は「アチラの元気が必要な時は弊社製品を」とメッセージを置いていた。ぼくは再生不能のセックス絶滅高齢種だよ。

よく獣のような、と粗暴な男子を形容するが、これは獣に失礼だ。彼らは子孫を残すため規則正しい発情期がある。その自然の法則に律されているが、健康な人間はぼくのように気持ちは永遠に発情していて、はしたない。ぼくのスピーチみたいに話が逸れた。いつも、あとは野となれ山となれ、だ。



 
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