ペン森通信
もう一度燃えさかりたい
 このところ、土日の休みを待ち焦がれるようになった。3年くらい前まではまったくその逆で、土日はうちでペン森に行きたくてうずうずしていた。今日は金曜日、あした土曜日の休日だと思うと、じつにうれしい。近々、土曜日にランチをしましょうという声がかかっているが、これは楽しく話をするだけなので、楽しみな休みの一環となる。結婚披露宴も気重になることはなく、これもいそいそと出かけるから、内心は歓迎している。

 ペン森で作文の添削をすることはいまでも重荷ではないが、作文を読む愉悦は減じた。前は、あの子は、きょうはどんな内容を見せてくれるのだろうというワクワク感が少なくなった、とでも言おうか。内面の興奮がなくなってきたのだ。それは学生の作文力の低下というよりも、ぼく自身の感受性が鈍化しているからだろう。要するに老化してきたのだ。手の指先も確実に指紋が薄くなって、茶碗を手にすると滑りやすい。

 このような摩耗現象は回復できないように思う。精神的にもねばりがなくなったようだ。
この間、MRI検査を受けたが、20分間ただじっとベッドに固定されている状態はじつに耐えがたかった。たとえば地震で閉じ込められたら、ぼくは半日も持ちこたえることはできないかもしれない。横山秀夫の『64』を最後まで読み切ったひとはえらい。ぼくは半分読んで挫折した。長編は敬遠、最近は向田邦子や藤沢周平や山本周五郎の短編の再読だ。

 ただ、きのうは船橋洋一の大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』の上下を買った。ずっしりと重い長尺ものだが、意外に読みやすい。ほとんどワンセンテンスごとに改行してあるからである。野坂昭如や開高健のように句点までが長く、ページにみっしりと字が埋まっていないから船橋作品は粘着性を失った老人にも読みやすい。若い人は知らないだろうがだいぶ前に亡くなった『黒の試走車』の梶山季之みたいに改行だらけである。

 あすの土曜日もうちでDVDをみることになるだろうが、DVDもたいてい早送りだ。きのうは『ヨーク軍曹』とナチの『強制収容所』各500円を仕入れたが、『強制収容所』はドキュメンタリーだから、『ヒトラーの犯罪』でもみた実写が頻繁に出てくるにちがいない。数少ない実写の使いまわしだろう。見たような映像が出てきたら、これも早送りになるが、20年前に目にしたアウシュビッツの記憶の上塗りにしたい。記憶持続道具としてのDVD。

 で、ぼくが短気になったかというとそうではない。あまり腹も立たなくなった。酒とも気長に付き合っている。嗜好品とはいえ焼酎から日本酒やビールに回帰することはあるまい。女子も好きな子は変わりなく好きだ。浮気をしてもそれは、酒の好みの変化と同じで、一人の対象に熱中する期間は長い。でもぼくの先はもう知れている。肉体もいちじるしく衰え、精神の保ちも悪くなったのだから、勾配のきつい急坂を下っているわけだ。

 ローソクの灯もまさに消えようとする瞬間、最後にひとさかり燃える。ぼくの人生もこうありたいね。燃える相手はこれまでのように20代前半だよ、と贅沢は言うまい。でも20代がいい。このまま摩耗して消えゆくのではなく、もう一回燃えてみたいのよ。

 


 このところ、土日の休みを待ち焦がれるようになった。3年くらい前まではまったくその逆で、土日はうちでペン森に行きたくてうずうずしていた。今日は金曜日、あした土曜日の休日だと思うと、じつにうれしい。近々、土曜日にランチをしましょうという声がかかっているが、これは楽しく話をするだけなので、楽しみな休みの一環となる。結婚披露宴も気重になることはなく、これもいそいそと出かけるから、内心は歓迎している。

 ペン森で作文の添削をすることはいまでも重荷ではないが、作文を読む愉悦は減じた。前は、あの子は、きょうはどんな内容を見せてくれるのだろうというワクワク感が少なくなった、とでも言おうか。内面の興奮がなくなってきたのだ。それは学生の作文力の低下というよりも、ぼく自身の感受性が鈍化しているからだろう。要するに老化してきたのだ。手の指先も確実に指紋が薄くなって、茶碗を手にすると滑りやすい。

 このような摩耗現象は回復できないように思う。精神的にもねばりがなくなったようだ。
この間、MRI検査を受けたが、20分間ただじっとベッドに固定されている状態はじつに耐えがたかった。たとえば地震で閉じ込められたら、ぼくは半日も持ちこたえることはできないかもしれない。横山秀夫の『64』を最後まで読み切ったひとはえらい。ぼくは半分読んで挫折した。長編は敬遠、最近は向田邦子や藤沢周平や山本周五郎の短編の再読だ。

 ただ、きのうは船橋洋一の大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』の上下を買った。ずっしりと重い長尺ものだが、意外に読みやすい。ほとんどワンセンテンスごとに改行してあるからである。野坂昭如や開高健のように句点までが長く、ページにみっしりと字が埋まっていないから船橋作品は粘着性を失った老人にも読みやすい。若い人は知らないだろうがだいぶ前に亡くなった『黒の試走車』の梶山季之みたいに改行だらけである。

 あすの土曜日もうちでDVDをみることになるだろうが、DVDもたいてい早送りだ。きのうは『ヨーク軍曹』とナチの『強制収容所』各500円を仕入れたが、『強制収容所』はドキュメンタリーだから、『ヒトラーの犯罪』でもみた実写が頻繁に出てくるにちがいない。数少ない実写の使いまわしだろう。見たような映像が出てきたら、これも早送りになるが、20年前に目にしたアウシュビッツの記憶の上塗りにしたい。記憶持続道具としてのDVD。

 で、ぼくが短気になったかというとそうではない。あまり腹も立たなくなった。酒とも気長に付き合っている。嗜好品とはいえ焼酎から日本酒やビールに回帰することはあるまい。女子も好きな子は変わりなく好きだ。浮気をしてもそれは、酒の好みの変化と同じで、一人の対象に熱中する期間は長い。でもぼくの先はもう知れている。肉体もいちじるしく衰え、精神の保ちも悪くなったのだから、勾配のきつい急坂を下っているわけだ。

 ローソクの灯もまさに消えようとする瞬間、最後にひとさかり燃える。ぼくの人生もこうありたいね。燃える相手はこれまでのように20代前半だよ、と贅沢は言うまい。でも20代がいい。このまま摩耗して消えゆくのではなく、もう一回燃えてみたいのよ。

 

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