ペン森通信
『八重の桜』はまだ咲かない
 テレビの連続ドラマを観るのは嫌だ。その場限りの見切りがよい。次回につづくのは,次週も観ることが確実であればいいのだが、そんな先のことなんかまったくわからない。ところがNHK大河ドラマ『八重の桜』だけは、一部だけ観ることが多い。ちょうど日曜日の夕飯どき、焼酎のお湯割りを飲みつつ7時のニュースから連続してチャンネルをNHKに合わせたまま『八重の桜』に突入してしまうのである。

 加えて、妻がドラマの背景を聞いてくるので、席を立てないという事情もある。背景は幕末から明治にかけての激動期であるが、妻はその方面にあまり通じてない。ヒロインの八重は会津藩のお転婆娘だが、ドラマはこの八重を中心に展開すると思いきや、時代背景のこみいった話が半分を占める。シンプルかつストレートに八重の生き方に密着した物語にすればいいのに、盛り込みすぎて欲張るから、難しいドラマになった。

 仔細は知らないが、視聴率は上がらないと思う。会津藩の藩主、松平容保(まつだいらかたもり)は徳川家に殉じようとする佐幕派で天皇のいる京都の警備・治安を守る守護職に命じられ、殺し屋集団の新選組を実行部隊として配下にもつ。会津藩は徳川幕府の崩壊によって悲劇の運命が待ち受けるのだが、『八重の桜』はこういう幕末情勢をつかず離れず追ってゆくから妻は複雑すぎて理解できない。ぼくの解説を求めてくる。

 ぼくの故郷は薩摩だが、結局は倒幕・開国派となる薩摩藩はけっこうずるく立ち回って、会津と手を結んだりして会津人の恨みは買わない。そこへいくと長州は不器用というか、融通がきかないというか、思い込みが強いというか、直線的。日本の夜明け前を推進したのが長州と薩摩を中心にした勢力であったことはまちがいのないところで、妻もこのへんの事情は知っている。だが、幕末・明治維新がもたらした怨念の深さは想像外だ。

 4期生に車好き旅好きがいた。いまは朝日日記者となっている山口県出身の男子。かれはひとりマイカーを駆って東北ドライブの旅へ出かけた。福島のスタンドで給油すると、店主らしいおやじが聞いてきた。「これからどこへ」「会津へ行こうかと」「そりゃいかん。殺されますよ、その山口ナンバーでは」「えっ、そうなんですか」「マジックペンを貸すから山口とわからないようにしなさい」。かれは殺されちゃだめだとびっくりした。

 そこで山口の口のまん中に+を書き入れて山田ナンバーと偽装した。山田ナンバーのおかげで会津を無事観光して通過できた。およそ150年たって、世代は変わっても怨念は消えていないらしい。さて、『八重の桜』の前回は池田屋事件で新選組がいよいよ表に出てきた。佐久間象山が惨殺されるシーンも描かれ、不穏に緊迫する京都だが、明治維新はもう目前である。ドラマはますます込み入ってきて、妻は不機嫌になるだろう。

 大河ドラマはおばさんにもよくわかるものでありたい。『八重の桜』の八重は一度結婚して離婚して、同志社大学の創立者、新島譲と再婚する。おばさんが好みそうな要素があるのになぜ複雑に仕立てているのだろう。シンプルかつストレートは作文の要諦でもある。
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