ペン森通信
女子の手を握るか握らないか
 村上春樹のコラム集『村上朝日堂』の「食物の好き嫌いについて1」にこんなことが書いてある。「僕はけっこう偏食がちな人間である。魚と野菜と酒についてはほとんどといっていいくらい好き嫌いはないけれど、肉は牛肉しか食べられないし、貝についてはカキ以外はまるでダメである。それから中華料理となると一切食べられない。だからだいたい魚と野菜を中心に、あっさりとした味つけのものを食しつつぼちぼちと日々を送っている」

 コンニャクだとかヒジキだとか豆腐だとか、要するに老人食だね、これは。とつづくのだが、村上春樹にくらべるとぼくの偏食なんてへでもない。鼻がきかないくせに匂いの強い山菜の類が苦手だ。三つ葉や春菊はやっと口にできるようになった。中華料理は全部好きであるが、本場で食するという犬や猿はダメだろう。テーブルに穴を空けて猿の頭だけをだして、鋭い刃物でてっぺんを輪切りし、脳みそを食べるなんてことぼくにはできない。

 食いものの好き嫌いから女性の好みの問題につながって行くのは当然の流れ。村上春樹もこの法則に絡みとられ「どうしてああいう奥さんと一緒になったの?」という質問は難問だ、と力説する。ぼくの場合、かわゆい系や美人系には評価が甘いとよく男子から指摘されるが、これはぼくが男だからある程度仕方ない面がある。ぼくが現役記者のころ女性記者はいなかった。5,6年あとにはじめて女性記者のサツまわりが登場した。

 他社の女性記者といっしょにサツまわりをした後輩によれば、女性記者が腰をおろして休んでいたソファから外へ出て行くと、その席に男子記者たちがわれ先に陣取ろうとしたそうだ。他を制して座った勝者は「まだぬくもってるぞ」と叫んだらしい。いまやむかしの話である。メディアはどこでも女子の比率を増やした。同期入社のうち4割3割は女子という時代になった。女子のほうが入社試験の成績がいいから多く採用せざるをえない。

 ということもあるが、取材現場で女性記者のほうがネタを取りやすいという傾向も大きいだろう。記者になって最初に放りこまれるのは警察に加えて裁判所・検察の司法。警察はとくに男の体臭がむんむんとする現場である。かわゆい系や美人系におっさんたちが鼻の下を伸ばすのは自然の摂理である。政治の世界でも女子はネタとりが巧み、というかネタを教えてもらえるのである。情報商売はネタが勝負だ。女性記者がふえる道理である。

 『村上朝日堂』のコラムは安西水丸のイラストが楽しい。昭和62年の発行だから相当古いが、若者が熱気にあふれ、社会が燃えていた当時の空気が伝わる。新装版だが、巻末の新刊案内に村上の『海辺のカフカ』や川上弘美の『センセイの鞄』などが並んでいる。『センセイの鞄』はぼくの好きな小説で、30代のひとり暮らしのツキコさんと70代の先生との年齢差哀愁恋愛ものだ。まだ70代になってなかったぼくも胸キュンとなったね。

 女子についての好きか関心がないかはぼくの場合、おおむねはっきりしている。酒が入ったとき、手を握りたくなれば好き、握りたくなければ嫌いか関心がない。感情よりも手のほうが正直に反応するのだ。清楚系女子ならしらふでも飲んでも握りたい。相手が握り返してくれれば、天にものぼる。
 

 

 
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