ペン森通信
ESは数撃っても当たらない
もう10年くらい前だが、エントリーシート(ES)を電車の中で書いている女子大生がいた。たまたまそれを目の前でみた記者が憤りのコラムに書いていた。ちょこっと記入しただけで通用するもんじゃないよ。ぼくは1ヵ月くらいかけて書いたもんだ。1ヵ月はかけすぎかもかもしれないが、せめて1週間は考えて記入してくれよ。という内容だったように記憶している。今年もまた春採用前のESシーズンになり、そのコラムを思い出す。

 ESは21年か22年かの過去の自分と直面するはじめての機会であるとぼくは考えている。ペン森にも2時間か3時間でさらさらと書く学生がいるが、お前の過去はそんなに軽いものだったのか、と軽蔑したくなる。就職難と言われながら、学生のESに取り組む姿勢には真剣さが不足している。朝日に入った卒業生のなかにはESを見る立場の記者もいるが、かれはESの劣化がはなはだしい、と口癖のように嘆いている。

 つまりは人生をまじめに生きてこなかった結果が、ESに反映されているのだ。この場合、まじめというのは授業にきっちり出ていた、という意味のまじめではない。なにをどう考えてきたのか、その思考を通して自分の意見を確立しているか、といったことや世界を旅して日本をどう客観視できるようになったのか、国内を旅したのなら地方に行って感じた日本の実相といった側面を、自分の言葉で表現できるかどうか、ということだろう。

 近年、若者は優しくなった。半面、心身ともに弱くなった。東南アジアひとり旅をして長期滞在もしてきた気の弱いペン森男子が前にいた。ところがかれは帰国してきたら、たくましい別人に変貌していた。自信をもってはきはきとものを言い、ものの言い方にも深い思慮が感じられオーラすら発して、リーダーシップを発揮するようになった。かれは1年目、就職に失敗して秋から外国に行き冬を越して帰国し、見事に脱皮したのである。

 ぼくも以前はもっとまじめで優しくはなかった。現役で早稲田に入った記者志望の女子に「なにも知らないまま社会に出たら社会に対して失礼だ。1年間休学してもう少し世の中のことを勉強してから記者になれ」と休学を強いた。2年後彼女は記者になった。広島に帰省する早稲田生男子に航空機や新幹線には乗るな、路線バスを乗り継いで行け、と命じ、かれに寝袋をプレゼントした。10日間かけてかれは日本の内臓を検視し帰省した。

 ペン森は帰国子女や留学経験者が多いが、一般に若者が内向きで欧米留学の学生が激減したという。ハーバードやMITやケンブリッジへ日本人学生が留学しなくなったのは、学力がついていけないと自覚しているか、未知への試練に二の足をふんでいるか、自分の意見を持ってない不安があるか、のどれかか、あるいはそのすべてだろう。ぼくは学力がいちばんの理由ではあるまいかと思っている。それはペン森でも明らかだからだ。

 学力低下や立ち向かっていく姿勢やこれまでの蓄積の浅さが、ES記入にも表れている、とぼくは感じる。印象に残るESはそんなに簡単に書けるものではない、ということはみんなわかっているはずだ。数撃ちゃ当たる、ということもESにかぎってはありえない。数を撃とうとするから全部が内容の浅いものになって、全敗につながる。1発必中のつもりで第一志望に時間をかけて集中すれば、使いまわしもきき、複数社内定の近道だ。 

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