ペン森通信
中島らもにはなれないが
 神保町に100円ショップが開店した。ぼくは100円ショップが好きで土日にはわが家の近所の店を必ずのぞき、ペン森の雑貨を補充している。神保町の店は通路が狭いので行かないが、その代わり古本屋街の歩道に面してワゴンセール状態で売っている100円古本が大いに気に入っている。最近勝ったうちの1冊が中島らも『しりとりえっせい』だ。90年に夕刊フジに連載したものを講談社文庫にまとめたものである。

 ちょっとシミがついていて、いかにも古本だが、奇才というか鬼才中島らもが博識を惜しみなく展開していて飽きさせない。ぼくは就寝時にページを開いているが、睡眠に入ってからも興奮がおさまらず夢を見ることがある。ゆうべは得体のしれない蛇のような魚がへそから体内に侵入してきて内臓が喰われた。これは日本近海にもいるらしいヤツメウナギの一種「ヌタウナギ」の記述があまりにもおどろおどろしかったせいにちがいない。

 「ヌタウナギ」は目がすっかり退化して、普段は海底の砂地にもぐっている。触角と嗅覚が異常に鋭く、頭上を大型の魚が通過しようものなら、腹に口からくっつく。円口類だから、口は丸く開いて、その口で吸いついて腹を破り中に入っていくのだ。体内に入られたが最後、魚は骨と皮だけになるまで喰われつくされるのである。このおぞましさにぼくは、へそのあたりがなんだかむずむずしたまま寝入ったらしい。

 もっとおぞましいのがアマゾンにいるという。あのピラニアではない。「カーネロ」というナマズの一種で、こいつは人体の穴という穴ならどこへでももぐりこむ。男性の場合は肛門から、女性の場合は膣口から侵入する。尿道へ入る場合もあるらしいが、体長15センチほどの小魚だ。体内に入るとエラを立て、抜けなくなるので、外から取りだすことは絶対にできない。体内に入ると内臓が喰い破られるのを待つだけだ。

 地元のひとは川に入らねばならないときは、貝殻などであらゆる穴をふさぐ。川から出たからといって、川っぷちで立ち小便をしてはいけない。こいつは「滝のぼり」もするのだ。尿の先から伝ってのぼってきて、尿道口に入りこむというから、どこまでもタチが悪い。もっともこれは人間の立場からだけの利害関係で、「カーネロ」にとっては正当な生存手段だ。なんらやましいところはなく、人間にとやかく言われる筋合いはない。

 以上、ほとんどが中島らもの本の引用である。『今夜、すべてのバ―で』でや『ガダラの豚』などの小説を親しみ、朝日新聞の「明るい悩み相談室」の回答者としてなじんでいたので、作家かと思っていた。ただ、ずいぶん破れかぶれのひとだとは、アル中ぶりを描いた『今夜、すべてのバ―で』を読んで知っていた。最初はコピーライター、飽きっぽいからなんでも手をだした、と本人は『しりとりえっせい』に言う。多才な奇人であった。

 ぼくは規格外の人間が好きだが、自分は規格内におさまってしまう小心な保守的タイプだ。規格内でありながら、規格外になろうとする。100円の価値でありながら1000円に見せようとする。自己矛盾に困っているから中島らもの「明るい悩み相談室」に相談してもよかったのにと、後悔している。 

 

 
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