ペン森通信
日本民族は絶滅危惧種
 おとといもきのうも卒業生が来訪して、屈託のない夜だった。よく笑うおかげでストレスから解放され血圧も下がって、若返る。みんな「先生、体を大事にしてください」と言いつつ、お酒を提げてくるが、ぼくはこのところ焼酎のお湯割り専門だ。日本酒の冷やはおいしすぎて、飲みすぎてしまう傾向があり翌日、下痢に悩まされる。焼酎お湯割りは体との相性もいいようで健康的。だが、老人がいつまでも健康でいいのだろうか。

 ぼくは健康であることに気がとがめる年齢に差しかかっている。電車のシルバーシートにも堂々と座れるようになったが、60代にはまだ遠慮があったのである。子どもや若者が陣取って席を譲ろうともしない、と文句を言う老人が多いが、これからを担う世代が座っていてどうして悪いのだろう。年少者の優先席があってもいいのじゃないか、とぼくは思う。だって、かれらの支払いによって年金や社会保障が支えられる。大事にしなきゃ。

 つらつら考えるに、ぼくもふくめた老人は日本の歴史上、最も恵まれた世代だろう。ちょっと上の世代は戦争に駆り出された。若者時代は親の世代よりも豊かな生活が送れると約束されていた。上り坂の上に雲があった。その雲をつかもうとして故郷を棄て、都会に出て家をもち車も愛用した。こうして核家族というばらばらの家族形態を経て、無縁化へとなだれ込んだ。いまの年少者にはなんでもそろっているが、その実、充足感はない。

 若者が先行きに思いを馳せると暗澹たる気持ちになるだろう。超老人社会を支えねばならないのだ。一人っ子同士が結婚すると、妻は自分の父母と義父母と4人の面倒をみなければならなくなる。夫は自分の親の介護すらきわめて不得手ときているから、妻に頼らざるをえない。だから結婚しないという女性もいるし、介護のために退社した女性もいる。結婚できる所得もないときては、非婚者は増える一方で、人口減少に歯止めはかからない。

 いまの20歳そこそこの若者がぼくの年齢に達する50年先には、関東一都六県分の人口が消える。総人口は8000万人台になると予想される。狭い日本でこれは適正規模の人口と言えなくもないが、老人が死なない老人だらけの社会という側面を忘れてはいけない。江戸時代は3800万人とされ、国を閉ざして自給自足の生活をしていた。その当時から昭和にかけて、人数の少ない老人をうやまった価値観がシルバーシートに継がれた。

あすぼくは病院の予約をしている。医者はしっかり禁酒しているか、と聞くだろう。老人は早く死んで次世代の負担を減らすのが社会貢献では、と反論したい。ぼくは死ぬならピンピンコロリの「ピンコロ」がいい。徘徊7年寝たきり3年という状態は避けたい。幸い脳梗塞の病歴がある。再発を希望するが、脳梗塞は寝たきりになる心配がある。「ピンコロ」は心臓疾患が近道だが、ぼくは心臓の弱い欧米人ではなく、頭の血管が弱い日本人だ。

 計算上はこのままいくと、日本の人口は3000年後ゼロになるらしい。まだだいぶ先だが、絶滅危惧種の日本民族だ。しかし、この惑星の現世老人は長生きして幸せだ。大正期には孫の顔が見られるじじばばは少なかったが、ぼくは4月、大学入学の孫娘と旅をする。毎日孫みたいな女子に囲まれて、ブータンそこのけの幸福度も味わっている稀な老人である。 
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