ペン森通信
『限界集落株式会社』は奮起小説
題名にひかれて小説『限界集落式会社』(黒野伸一/小学館)を買った。昨年11月30日初刷りなので、いままで知らなかったのは不覚である。題名もいいが、3・11後から9カ月たって被災地を訪ねて以来、中央集権の無力、限界を強く感じるようになったことが大きい。中央政府の無力を目の前にして地方の主権確保こそ日本再生の有効策だと考えが傾いてきたのである。

 被災地を車で案内してくれた卒業生の地元銀行新人が、被災地に仕事を見つけて働こうかと思う、という意味の相談をしてきた。ぼくはやめとけ、と一言ではねつけた。被災地転勤を希望し、再生に熱心な人物に融資してサポートしてくれれば賛成するが、先行き不安定な道を選ぶのはあまりにも無謀だ。きみの若い可能性を被災地にぶつけてみな、とどうして言わなかったのだろう。

 その悔いをずっと引きずっていた。折から、東北の地方紙に勤めている卒業生の女性記者が退社した、という話を耳にした。感性の鋭い善良な彼女がどうして、と首をかしげた。福島出身の彼女の年賀状に「食と農のライターになる」と添えてあって納得。彼女は単科大学から社会学を専攻すると言って、4大に編入した。提出レポートに書く本はなにがいいか、と助言を求めてきた。

 ぼくは見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書)を勧めた。彼女は特待生として卒業し、大学から10万円の報償を受けた。5万円を親に、残りの5万円をぼくにもってきた。ぼくはせり上がってくる感情をとめ切らず、その場で号泣した。「先生、そんなに泣かないで」と彼女は困惑気味だった。「食と農」は地方に根づいて、都市やいのちを支える。現代をえぐるナイフのようなテーマだ。

 ペン森の某くんが地元に帰って地方政治家をめざすという。冗談かもしれないがぼくは本気にとって、ぜひやってくれ、とせきたてた。若い連中が地方議員から村長町長市長となって、地方をかきまわし、それが中央にまで波及すれば日本はだいぶ変わる。大阪市長橋下徹人気の根源にはそれと相通じるものがあるだろう。某くんのホンネが奈辺にあるのだろうか、それを知りたい。

 評伝によると、村落の凋落を止め、地方を勃興させることが日本の生命線だ、と力説したのは明治の知の超人、南方熊楠である。発展途上国型の中央集権というシステムは、民間に対する許認可権を活用して高度成長には力を発揮したが、下り坂のいまは権限を手放さないことに執着して、かえって機能不全に陥っている。国の縦割りと前例主義による対応不能が復興を遅らせているのだ。

 『限界集落株式会社』は、まだ半分も読了してないが軽いタッチの小説。だがかねて疑問符をもっている重いキーワードが刺激してくる。「農協」「自給率」「交付金」「農薬」「コメづくり」。この本は「食と農」の女性ライターはもう読んでいるかもしれないが、独立のプレゼントにしようか。奮起してくれるだろう。自給率も生産ベースでいえば世界5位だ、地方復活のために自由な立場で中央政府の欺瞞を暴いてほしい。
スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://penmori2007.blog108.fc2.com/tb.php/413-c54ce76e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

瀬下先生

Author:瀬下先生
FC2ブログへようこそ!





最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する