ペン森通信
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一途の情熱に期待
 新聞社に提出するエントリーシート(ES)の、好きな本の項目に大崎善生の小説をあげた男子がいた。大崎の小説が好きとは、はじめてESで目にしたのでよく憶えている。大崎は小説よりもノンフィクションに優れたものがあるから、『聖の青春』や『将棋の子』だったら、ぼくにもわかる。大崎は日本将棋連盟に就職して、雑誌『将棋世界』の編集長を10年間務める。青春ノンフィクションの第一人者である。

 ずっと以前、このブログで名著『聖の青春』は取り上げたような気がするが、定かではない。聖(さとし)とは29歳で病死した棋士、村山聖のことだ。「村山ほど一途に将棋に打ち込んだ棋士はいない、とその死後誰もが口を揃えた。村山というたった1人の人間の将棋への純粋な情熱が、ある意味では将棋界を支えていたのだということを教えられる。体の悪い村山があんなに頑張っているんだから、自分も負けるわけにいかない。そう思って歯を食いしばった棋士がどれくらいいたことか」と大崎はエッセーで書いている。

 3・11大震災から3カ月「被災者のことを思えば」というせりふがほとんど日常化した。他者のつらい立場を類推してわが身を処する癖がついたひとも大勢いることだろう。上をみればきりがない、欲をつっぱらず身分相応で満足しておけ、という人生訓は、それなりの恵まれたひとにそれ以上望むな、と諭すことばだが、下をみればきりがない、ことをわれわれは3・11で知った。これは上をみるより、自分を奮起させるバネになる。

 ペン森は高い内定率が自慢だが、それでも採用試験に落ちる受講生が毎年いる。採用する側が決めることだし、ぼくは採用側に無謬性はないと思っているので、なぜ落ちたのかと聞かれても歯切れが悪い。それでも採用試験の傾向として、実力のある優秀なやつは内定するし、文法がおかしく誤字の多い学生は落ちる。そこへいくと、将棋のような勝負の世界は勝ちか負けしかない。強ければ勝つ、弱ければ負ける。はっきりしている。

 近年のマスコミESに必ず記入させるようになってきたのが「これまで熱中したことはなにか」という項目である。集中力があるかどうか、継続してなにかをやりぬくパワーがあるかどうか、などを知りたいのだろう。ぼくは「熱中」と同時に将来やりたいテーマをもっているか、どうかも重要な項目だと考えている。やりたいテーマさえあれば、苦境や辛苦に陥った場合でも、我慢して乗りきれるものである。

 言ってみれば村山聖の「将棋への純粋な情熱」を持ち合わせていたら、いいマスコミ人になれる資質が備わっている、ということだ。将棋をなにかやりたいテーマに置き換えて考えるといい。問題は、純粋な情熱が若者から立ちのぼってこないことだ。明らかにぼくらの学生時代に比べて、いまどきの若者は情熱が不足している。熱情のあまり口論から喧嘩沙汰に発展することもない。大崎のノンフィクションは激しく熱中する青春を描く。

 村山聖の師匠は森信雄6段だ。大崎はこの師弟関係を書くことにそれこそ、純粋な情熱を注ぐ。師匠は命がけで将棋を指す弟子のためにパンツまでも洗ってあげる。なんと美しい師弟関係だろう、とぼくは思う。ぼくにも新しいペン森生のなかから何人目かの特別の弟子ができる可能性が濃い。弟子は女子なのでパンツは洗えないが、20代の一途な情熱に期待するばかり。
 
 

 

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