ペン森通信
買えば義援金『震災歌集』
『震災歌集』という本(中央公論新社)が発行された。筆者は俳人の長谷川櫂。【その夜(3月11日)からである。荒々しいリズムで短歌が次々に湧きあがってきたのは。私は俳人だが、なぜ俳句ではたんかだったのか、理由はまだよくわからない。「止むにやまれぬ思い」というしかない】。ほんの一部を紹介するが、1100円+税、ぜひ購入されたし。印税は義援金となる。

【かりそめに死者2万人などといふなかれ親あり子ありはらからありを】
阪神・淡路大震災のときNHKの男性アナウンサーが冷静にたんたんと死者の数を述べていた。すると突然、アナの顔がゆがめ涙をぽろぽろと流し、嗚咽しながら「この数字の方たちはみな急に人生がなくなったんです。家庭があり、親がいて、兄弟がいて、子どもがいて、それが断ち切られたのです」という意味のことを言いはじめた。ぼくは事実報道と主観報道のちがいを考え、ルポの場合、主観報道がいいのではと考えるようになった。

【大津波溺れし人を納むべき棺が足りぬといふ町長の嘆き】
3・11は大地震の死者よりも、水死が92・5%を占める。津波の犠牲者が圧倒的に多かった。震度7を記録して最も激しい揺れに襲われた宮城県栗原市は死者ゼロ。いかに津波被害が大きかったかを示している。こういう災害で犠牲者になるのはたいてい、高齢者だ。60歳以上が65%もいる。遺体は自衛隊が敬礼で見送ったが、棺に納められた人はまだよかった。棺不足で毛布で覆い、しまいにはシートで覆っただけだったという。

【かかるときかかる首相をいただきてかかる目に遭ふ日本の不幸】
最悪のときに最低の首相をいただいた。被災者は無念だ。首相会見で「あなたの存在自体が最大の不安材料だ」と迫った記者がいて、そのままNHKで流された。20くらいなんとか本部だのを立ち上げているが、ただ数だけ多く、それぞれの役割分担さえほとんどだれも知らない。戦争や大事故のとき最もやってはいけない逐次投入でその場をしのごうとしている。それだけで司令塔としては不合格だが、首相を選んだのはわれわれである。

【「今の若者は」などとのたまふ老人が両手に提(さ)ぐる買占めの袋】
土日、ぼくは買い物をするので3・11直後のスーパーの様子は比較的つかめたほうだろう。都心や下町ににょきにょき伸びている高層マンションや超高層マンションではエレベーター利用よりも階段を上り下りした人も多かったのでは、と思う。足腰も弱っている。階段を上り下りの苦労を思えば買い占めざるをえない。「いまの若者」にしてみれば、「いまの老人は」と言いたいこともあるだろう。ろくでもない老人も多いしなあ。

 【いつの世も第一線は必死にて上層部のやから足を引っぱる】
『踊る大捜査線』の青島刑事は会議室のおえらいさんに向かって「事件は現場で起きてるんだ」とマイク越しに怒鳴る。福島原発1号機への海水注入が55分間中断しという騒ぎは、一転して現場所長の判断で注入を継続していたことがわかったが、ぼくはこのとき青島刑事の怒りのせりふを思い出した。「会議室」にいたのは東電幹部と内閣官房。「海水注入を止めろ」と言ったって、原子炉は冷却するのが鉄則。所長は正しい判断をしたのだ。

 【つつましき文明国であるために必要なもの不必要なもの】
ペン森OBが来て感心していた。「年収300万円でも生活できるんですね」。まさにぼくは300万生活者だが、これは老人だから可能という面がある。住宅ローンは完済したし、車も手放した。衣類や靴や本はストックで十分。慶弔費用が多いだけで、医療費もいまのところたいしたことはない。旅の費用があればと考えたりするが、これもときどき舞い込むアルバイト代が補ってくれる。まあ、震災後もつつましい文明生活をしているといえる。
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