ペン森通信
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生きているあいだに、旅だけは
東北のどこかに1泊して酒食を堪能して、翌日引き返す。ぼくができる被災地への激励はそれくらいのものだ。東北巡りの最後の楽しみのひとつ、東京から行くと仙台の手前に位置する白石で下車して温麺(うーめん)をもう2、3回食べたいと思っていた。まえに何回か食べ、たいへん気にいっていた。温麺はソーメンの一種だが、温くして食べるのがうまい。長さはソーメンよりも短く10センくらいが束になっている。

 神保町のスーパーで売っていたこともあったがここ数年、まるで見かけない。ぼくはソーメンでも温ソーメンのほうが好きなので当然、温麺はラーメンと同じくらい好きだ。いや、ラーメンよりもいい。ぼくは汁もので日本酒を飲むのが好みで、みそ汁もりっぱな酒肴になる。しかし日本酒は豚骨ラーメンとは合わない。温麺とはよく合う。白石で降りて駅そばの、前に行った店で温麺と地酒を注文して、ゆっくり味わいたい。店は健在かな。

 遠出したいと思えど、ぼくには自由に使える時間がない。土日はサラリーマン並みに休むが、祭日は通常どおりペン森に出てくる。世間的にはリタイアした隠居の身である。23,24日の土日、しっかり休んだが2日間では足りないと体が訴えてきた。土曜日はほとんどただごろごろしているだけで1日がすぎる。日曜日のみ活発に活動できるが、それだけでは充足感がない。休みがもう1日あればいいのに、としみじみ考えてしまう。

 といって、ペン森に出るのが億劫なわけではない。ペン森のおかげで老骨人生にも張りがある。毎晩酒を楽しみ、若者に好き勝手なことを言っても、いさかいもないし、女子もかわいい。ちやほやされてストレスもたまらず、ほんとうに楽園のようだ。しかし大震災以降、そろそろ引き際ではあるまいかという選択も意識のなかに入ってきた。ペン森にかかわっていると身動きがとれない。旅の時間がほしい、としみじみ思う。

 まとまった時間がほしい。よくローカル線の各駅停車のなかでファイルに入れた地図を首から下げている中年の男性を見かける。ひとり旅のおっさんだ。たぶんリタイアしたあと、楽しみであちこち回っているのだろう。いつも指をくわえて羨ましく見てしまう。いつかはおれも、と胸に期すものがある。その「いつか」が徐々に近づいてきている。さしあたり時間だけでなく旅費もないので、ただちに実行はできないのが切ない。

 大震災この方、たぶん心境に変化があった。生きているあいだに、という心理が強く働くようになった気がする。いままで抑制してきた自分を解き放って自制はやめよう、という宣言は大震災前からおこなっていた。すべての生き物は生をうけたときから死に向かっている。大津波はその流れではなく、理不尽な突然死をもたらした。あまりにも切実に死を考えさせられたから、やり残しのあれやこれやが激しく迫ってきたのである。

ぼくのやり残しは、表現欲望も関心事も旅に集約される。大津波にさらわれて生命まで呑みこまれたひとのなかには、リタイア後に旅を楽しんでいた初老もいたのではないか。旅行者や出張者2500人が被災したと最初は報じられたが、どうなったのだろう。とりあえずひとりで温麺を食べに行かねば。旅のノンフィクションも書きたいが、これにはチャップリンのステッキの効果を満たしてくれる女子が必要だ。女子は実質、介護役だけど。

 



 

 
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