ペン森通信
原発対応もあいまいDNA
 「あいまいな日本」と題して川端康成はノーベル文学賞受賞の記念講演をした。どのような内容だったか、とんと思いだせないが、日本人のあいまいさは古くからあって、これはまぎれもなく民族のDNAである。学者ら6人がまとめた『失敗の本質――日本軍の組織的研究』(中公文庫)を読むと目的や攻撃目標が明快であるべき軍隊でも旧日本軍は、指令や命令がすっきりせず、受け取ったほうはかなり混乱したらしい。
 
 たとえばミッドウェー海戦。「ミッドウェー島を攻略し、ハワイ方面よりする我が本土に対する敵の機動作戦を封止するとともに、攻略時出現することあるべき敵艦隊を撃滅するにあり・・・」という作戦目的をどうとらえるか。前段はミッドウェー島攻略、後段は米艦隊撃滅を目的としている。この命令について敵方の米ニミッツ提督は「二重の目的」と酷評したらしいが、たしかにどちらに比重がかかっているのかわからない。

 ミッドウェー海戦で米軍は大勝利をおさめ、太平洋戦争の重要な転換点になるのだが、指揮官の二ミッツ提督は目的を日本空母軍の撃滅に絞り込み、「空母以外には手を出すな」と厳命する。その結果、米軍は戦力を集中して有利な戦いができたのである。論作文やESの添削でぼくはワンポイントに絞り込むべし、とよく指摘する。あれこれと盛り込みすぎて、結局はなにを言いたいのかがぼやけている例があまりにも多いからだ。

 論作文だけでなく、記事やノンフィクション文章の要諦は10を知って1を書く、ということだ。10を取材して1を表現するには残りの9を捨てねばならない。論作文は書く作業ではなく捨てる作業である、と力説するのは9を捨てる、ということをさしている。せっかく調べたことを廃棄するのはむずかしい選択ではあるが、すべてを網羅した文章は核のないあやふやな論旨にならざるをえない。その結果、あいまいな文章になる。

 一般に男子よりも女子のほうがケチだと言われる。以前は女子が盛り沢山の焦点の定まらない文章を書いたものだが、最近は男子にもケチが目立つ。思い切りの悪い男子が増えた、ということだろう。恋愛関係では男子が未練たらたらと諦めが悪く、女子はきっぱりこだわりを捨て去る傾向が強い。旧日本軍という組織もケチで盛り沢山の作戦を1点に絞り切ることができなかった。内実は決断力に欠ける現在の草食系男子だった。

 「一つ一つの作戦が敗戦、無条件降伏という決定的な結果へとつながる重大なポイントであった。そのうえ、一つの失敗が次の失敗に、また次の失敗にという形で直接あるいは間接に関連し合っているのである」(『失敗の本質』)。福島原発は政府と東電の初動対応の失敗が言われるが、失敗の連鎖は避けてくれなくては困る。不幸中の幸いだが、日本だけの処理だけでなく、国際的な技術支援があるから旧軍のような失敗はするまい。

 枝野官房長官が「屋内退避」を勧告しながら「自主避難を」と言いだす矛盾は、あいまいさの極みだ。住民が「どっちなんだよ!」と怒るのは当然だ。避難指示区域が3キロ⇒10キロ⇒20キロと拡大したのも、とりあえずみんなにいい顔だった。農耕定着民族の日本人は、最初は摩擦を避けて様子見をする。出る杭にはなりたくない。周囲を見てから態度を決めるから、あいまいにならざるをえない。すなわち民族のDNAである。
 

 

 
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