ペン森通信
「でき婚」と責任の取り方
世界一短い手紙はヴィクトル・ユゴーと出版社のあいだで交わしたのが有名だ。ユゴーは『ああ無情』を出版したとき売れ行きが気にかかった。そこで出版社に「?」と書いただけの手紙を出した。返事もただ一言「!」。「売れ行きはどうだい?」「売れ行き好調ですよ!」というやりとり。この世界一短い手紙で知られるユゴーだが、世界一かどうかは知らないけど男性機能が絶えることなく、まれにみるほど長持ちしたことでも有名である。83歳の7月だか8月だかに没するが、そのときまだ現役だったというから恐れ入る。

ユゴーの絶倫ぶり、初夜に9回、と以前にもこのブログで書いた記憶がある。ところで絶倫の意味がわからない若者もいまや少なくない。ぼくは帰宅中の夜中の電車で同じ方向に帰る女子にいきなり「絶倫ってなんですか」と大声で聞かれてへきえきしたことがある。厚労省の発表によると、第一子の4人に1人ができちゃった婚の子だという。「でき婚」は95年が18%だったが、すこしずつ増えてきた。その割合は年齢が低いほど高くなり、15~19歳では8割にのぼっている。10代後半はまだ絶倫なんだ。その限りでは慶賀の至り。

 女子のあいだでは「でき婚」という言葉はもうあまり使われないそうだ。「さずかり婚」が当世風の美風らしい。そういえばダルビッシュ投手は「でき婚」だったが、インタビューで「子どもをさずかりまして」と嬉しそうに言っていた。子どもをさずかったのはいいが、そのダルも同じ24歳の紗栄子夫人と離婚の協議中。虐待ママや虐待パパはどうも若すぎる「でき婚」の果てというケースが多いようだ。「でき婚」でも「さずかり婚」でも構わないが、性欲を満たすための婚前交渉がまねいた不幸な結末である。

 「でき婚」は英語では「ショットガン・マリッジ」とか「ショットガン・ウェディング」と呼ぶ。妊娠した娘の父親が相手の男に銃を突きつけて、婚約を迫ったことからきている、という。日本でも妊娠させたら責任をとる、という男がむかしはふつうだった。今回の「でき婚」調査でも責任をとってやむなく結婚した男らしい男子も含まれているだろう。結婚以来、その男子が世も末の不幸を感じて悔やんでも、もう遅い。離婚も増えたが、離婚は相当のエネルギーを必要とする。結婚は勢いだから簡単にできる。「でき婚」は簡単婚だ。

 責任をとらなかったのが、島崎藤村である。ぼくは藤村の抒情詩が好きな少年だった。「まだあげ初めし前髪の・・・」(初恋)。「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ・・・」(千曲川旅情の歌)。千曲川の後半「昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにを齷齪(あくせく) 明日をのみ思ひわづらふ」に人生を感得した。いまでも好きな言葉だ。藤村の妻は産後の肥立ちが悪く亡くなる。姪にあたる兄の娘が家事の手伝いによこされる。藤村はこの姪に手をつけた。妊娠した姪を残して、藤村はフランスへ逃げる。

 なんという偽善者の藤村だろうか。当時のことだから姪は処女だった。処女はだめ、ということはないが、相手は姪だぞ。いまの「でき婚」でさえ、逃げる金はないにしろ、それなりの手続きを経ていっしょになっている。お前に、藤村を罵倒する資格はあるのかと問われたら窮するがしかし、ぼくはむかし絶倫いま絶望だよ。

 
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