ペン森通信
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現場へ行って考えて自分を掘れ
 このブログを読んでいるという大学2年のHくんが体験入塾に訪れた。通信社を軸にしたジャーナリストをめざすらしい。「大学2年でここに通うのは早すぎるんじゃないの。3年生になってから来ては」とぼくは告げた。「その間、ネタ探しをしたら」と席にいた3年のOくんが「ぼくは1年生のときに先生と知り合った。やはり2年になって、通いたいと言ったら、同じように早すぎると指摘され、まずネタを仕込め、とアドバイスされた」と助け舟を出してくれた。

 最初は、なにがマスコミ採用試験の作文に使えるネタかわからないだろう。そこでぼくは、2,3の例を示しておいた。東京なら府中にある慈恵院。ここは日本でも古いペットのお寺でりっぱな犬猫の墓が並んでいる。ペットの犬猫を供養する霊園がネタではなく、霊園の一角に棚状の列になって整理されている水子地蔵にまつわる話がネタである。水子地蔵は、胎児を悼む地蔵菩薩だが、戦後、ベビーブームの最中の1949年、出産制限のため中絶が経済を理由にすれば可能になってからとくに増えた。

 慈恵院には水子地蔵が無数にある、だけではなんのネタにもならない。水子地蔵を基にして考える、とネタつまり題材になりうるということである。日本ではほぼ自由に中絶ができる、これが少子化の一因ではあるまいか、と推察してみる。では出生数と中絶数の関係は? 結婚数と出生数の因果関係は? 景気と中絶の関係は? 日本は2005年から人口減社会に転じたが、人口と中絶の関係は? など考えれば連鎖的に発展していくだろう。卒論の資料集めと称して、人口問題研究所あたりの広報にでも聞けばいい。

 長野県上田市の無言館はペン森生の定番ネタ場だが、ぼくが最初に行ったときは本館の信濃デッサン館しかなかった。すっかり有名になり、いまでは観光バスの駐車場までできている。入場者の「すすり泣きの声が聞こえる美術館」という以前のイメージとはほど遠くなったが、戦地で亡くなった画学生の霊がさまようような気配は残っている。「若者・戦争・故郷・愛」といったやや複雑なテーマが浮かぶ遺作美術館だ。ここは出口で入場料を払う仕組みだが、入場料はいくらと決まっているわけではない。

 新潟県の旧山古志村も定番のひとつ。全村が中越地震で避難したが、ここは錦鯉の産地で棚田の最も上の水田の利用法として鯉を飼育したのがはじまりといわれる。闘牛も盛んで円形のスタジアムも常設されている。だが、山古志でネタになるのは、中山隧道という約900メートルの手掘りトンネル。以前、妊婦や病人が出ると豪雪地帯の峠を越えなければ病院にいけなかった。峠で亡くなってしまう悲劇も珍しくなかったという。 

 そこで村人はトンネルを自分たちの手で掘ろうと昭和8年、ツルハシで掘りはじめる。10年たって324メートル進んだところで戦争。中断するが昭和22年、戦争から男たちが帰ってきて工事再開。急ピッチで工事は進捗して24年5月に開通する。執念のトンネルである。山古志村は長岡市と合併したが、旧村民に山古志魂は生きている。この中山隧道を歩いて通ると、人間の力というものなど考えることも多い。Hくん、ぜひ行って隧道の坑内を歩いて考えてみてくれ。考えて考えて自分を掘るほどいい作文が書けるよ。



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