ペン森通信
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尖閣ビデオの保安官は陽明学派?
尖閣ビデオで政界とメディアは大騒ぎだ。菅内閣の株はいっそう下落し、世の中の大方は政府の対応に腹を立て、はじめから一般公開していたらなんの問題も起こらなかったはず、どこが秘密なんだ、と投稿した第五管区の保安官にむしろ拍手を送っている。保安官は43歳。満年齢の現代と数えの昔とでは正確には違うが、陽明学派の巨塊で大塩平八郎の乱を起こした大阪町奉行の与力、大塩平八郎も43歳だった。保安官の投稿を義挙だと英雄視する向きのなかには、保安官と同じ取り締まり側に属していた大塩平八郎を連想したひとがいたかもしれない。

 保安官には読売テレビの記者が2時間接して取材していた。「私がこういう行為に及ばなければ、闇から闇に葬られて跡形もなくなってしまう」と動機を述べている。保安官は国民のだれがビデオを見る権利がある、という思考に支えられ、やむにやまれず投稿したらしい、とその取材報道では読みとれる。大塩平八郎の乱は天保8年という幕末だが、当時、関西地方は凶作に見舞われ、飢餓が続出していた。幕府はなすすべを知らず、さらに大塩の嘆願にも聞く耳をもたず、ついに大塩は私財を売って金に換え、それを窮民に与えた。

 だが、それだけではまかない切れず、大塩はたまりかねて自分を雇っている幕府に対し武装蜂起する。この大塩の行動は陽明学という「特殊思想によって理解するしかない」と司馬遼太郎は、乃木希典の人生を追求した『殉死』(文春文庫)のなかで言っている。乃木は、日露戦争でその無能ぶりを天下にさらし、無数の兵隊を死に追いやった犯罪的将軍だが、そのことの責任は問われず、明治天皇に殉じて切腹したことでむしろ英雄視されてきた。リーダーに無能な人間をいただくと、その下にいる人間は極度の不幸を背負う運命になるという例である。

 菅首相は首相になりたかっただけのひとだし、その無能ぶりによって中国、ロシアにつけこまれた。領土問題はナショナリズムを刺激する。60年安保後、これほど憂国の情が横溢したことはなかった、と思う。43歳の保安官が陽明学を学んでいたかどうかは知らない。乃木希典もまた陽明学徒であり、長州にあって吉田松陰の叔父、松下村塾の開祖玉木文之進の住み込み弟子となる。乃木は、陽明学の流れをくむのは「大石内蔵助、吉田松陰、西郷隆盛がいる」と副官に語ったと『殉死』にはある。尖閣ビデオの保安官がこの流れの延長線上にあるなら、ぼくはかれを賛美する。

 陽明学は行動を伴う自己犠牲の救済思想であるから、保安官が菅内閣から情報窮民の国民を救いたい、という思いに駆られてネット公開に踏み切ったのなら、話はわかる。そこまで国民の知る権利を熟考したとは考えにくいが、世の中に尖閣ビデオ問題に関して情報飢餓感が蔓延しているこことはまちがいない。その背後にあるのは下り坂日本の先行き不安であり、無能な政治に対するもどかしさであろう。日本にこのようなやるせなさが滞留している以上、ネットに直接訴える行為はまだつづくだろう。告発者が真の陽明学徒であれば世の中動くだろうに、陽明学ももう消滅しているか、残念。


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