ペン森通信
やぶれかぶれは見果てぬ夢
 以前にこのブログで紹介したことがある開高健『人とこの世界』(ちくま文庫)を毎日寝床で、すこしずつなめるように読んでいる。この本は連続人物評論集である。佐野眞一は「開高のノンフィクションというと、『ずばり東京』や『ベトナム戦記』、「オーパ!」の世評が高いようである。だが私の見るところ、『人とこの世界』が描き出した深々とした世界には及ばない」と解説で一押しの弁を述べている。

 評論の対象になっている人物は、もはや若い世代にはなじみのなさそうな以下のメンバー。広津和郎、きだみのる、大岡昇平、武田泰淳、金子光晴、今西錦司、深沢七郎、島尾敏雄、古沢岩美、井伏鱒二、石川淳、田村隆一。ぼくはこのなかのだれにも面識はないが、作品は読んでいる。島尾敏雄の『死の棘』は病妻もので知られるが、妻の病気は心の病である。20年くらい前、誰彼となく、勧めたものだ。浮気をした夫が狂気の妻に執拗に責め苛まれるるいう、心理の微細をきわめた私小説。戦後文学の最高傑作という人もいる。読んで陰鬱になりたいかたは、新潮文庫にあるからどうぞ。

 ぼくが改めて興味と憧憬を刺激されたのは、きだみのる、金子光晴、深沢七郎。いずれも漂泊放浪やぶれかぶれの、天下の自由人である。鹿児島県奄美大島出身のきだは、パリ大学に留学したフランス語の名人だった。束縛きらいの特異な人物だったらしい。八王子の恩方に長いあいだ住んでいて、不意にいずこかへ出かけた。行き先は東南アジアだったりモロッコだったりした。このへんは金子光晴と似ている。昭和18年の『モロッコ紀行』は日本人が書いた外国旅行記の最優秀な1冊と開高は絶賛している。

 ただ金子は妻を伴うが、きだは独りである。「家庭団欒などは見ていてヘドを催すな。女は発見や前進の危険を冒さんですよ。女は安定のなかにいたい。家庭だなんてのは女の発案でね。たえず変るものには耐えられないのだわナ。餓死と贅沢のあいだを往き来するというようなことは女にはできないのだ」。真実を衝いてけだし名言のようにみえるが、時代は変わって、女を現代の男に当てはめれば、草食系男子かマイホームパパに当てはまるんじゃないの。きだの感懐は男が猛々しかったころの話。

 開高「当時60歳のきださんが20代の私に向って、私がきださんのように文体をいつまでもみずみずしく若く保つためにはどうしたいいか、とたずねたら三つの方法があるときださんはいった」。1つは横文字の本をたえず読めということ。2つ目は文壇づきあいをするなということ。「けれど最後のが非凡で唐突でした。女とやるときに上に乗るなというんです」。あれま、71歳のぼくには3つとも関係ないね。だけど、自由人ってなんと着想も超越していることかと感心する。老いて肉体は不自由をきたしても、精神は自由を求めてやまない。やぶれかぶれは男の見果てぬ夢です。
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【2010/01/23 03:55】 URL | さよ #rmKhzUUk [ 編集]


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