ペン森通信
NHKを辞めて自殺防止に人生を懸ける
 自殺者がはじめて3万人を超えたのは、1998年である。前年の97年は4大証券のひとつ山一証券や都市銀行の北海道拓殖銀行が破綻するなど経済危機をまともにくらった。自殺者の4割は中高年で原因・動機は全体の3割強が健康問題(6割強)に次いで多いから、経済状況の悪化による生活・経済苦が自殺増に直結したのだろう。98年の自殺者は正確には3万2863人であった。

 3万人超はその後、途切れることなく続き、08年まで連続11年におよぶ。1日90人が自殺する国なんてやはりどこかおかしい。日本は名だたる先進国の経済大国であるが、不名誉な自殺大国であることもまた論をまたない。男性の自殺率は世界1だから、自分の生命保険と引き替えにやむなく自殺選んだという赤字経営者もいただろう。財政事情に苦しんでいるぼくは、死んだら生命保険はいくらおりるのだろうかと考えることがあるから、ましてや、と想像できる。

 ノンフィクションライターの斎藤貴男さんによる『強いられる死 自殺者3万人超の実相』(角川学芸出版)は自殺にいたったそれぞれのケースが克明に記されていて痛ましい。同時に自殺に追い込んだ人間や立場の理不尽さにも腹が煮えくりかえる。この本の中でNHK『クローズアップ現代』のディレクターをやってやっていた清水康之という人が、「誰も自殺など選ばずにすむ世の中を」と思いつめて報道の世界から去った話がでている。

 紹介されている清水さんのスピーチ。「(3万人超の自殺は)交通事故死の6倍です。東京マラソンの参加者は3万2400人でしたから、ほとんど同じですね。(略)彼ら1人ひとりにゼッケン番号があるように、自殺した方々にもそれぞれ、かけがえのない人生がありました。私たちはついつい自殺者が増えた、減ったという言い方をしてしまいがちですが、自殺者は本質的に減ることがありません。3万3000人が自殺した次の年が3万人になったからって、差し引き3000人が生き返ってくるわけではないんです」

 清水さんは『クローズアップ現代』で親に死なれた子どもたちの取材に当たっていたが、NHKを辞めてNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」を立ち上げる。自殺対策基本法制定の立役者である。なんと気高い志だろうとぼくは感動した。制約や束縛の多い企業内ジャーナリズムから飛び出して、自分のテーマを追求していく、という生き方。すごいな、とぼくは思う。

 清水さんも生活が大変だろう。志や理想主義では生計が成り立たないのが日本の社会である。清水さんのような独自の生き方をする人に対する応援体制や寛容な精神が充足していないところに、自殺が発生する要因もある。それを改善するのはジャーナリストの責務だ。
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この記事に対するコメント
もう半年ぐらいしてません
気軽に会える方って居ませんか??あんまり経験のない人は少しお断りかなぁ・・・。 happy-my.life@docomo.ne.jp
【2009/11/21 02:10】 URL | ちなつ #reoZSKeA [ 編集]


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