ペン森通信
無理を言うが小説『無理』を読め
 奥田英朗の『無理』は本文540ページの大作である。税抜きで1900円もするので、買い控えていた。この定価だと、ぼくはぎっしり2段組みでないと、もったいない気がしてあまり手をださない。文庫になるまで待とうか、と考えたりする。年金生活をしていると、根がケチな性分に輪がかかるようだ。パンツはもっぱら100円ショップになった。すこぶる履きいい。しまむらよりもずっと安価でごゴム負けもせず、ぼくには快適。

 100円ショップのパンツを色違いで5枚も買っちゃった。近所の西友の1枚かせいぜい2枚分だよ。ケチなくに、飲食や旅の出費にはあまり神経質でもない。旅はめったなことでは新幹線に乗らないし、ましてやジェット旅客機なんて、あんな思い物体が空中を飛ぶとは神への冒涜ではないかとさえ思う。中空に浮かんでいる飛行機をみて、あのなかで人間が行儀よく並んで座っているのだ、と想像すると気持ちが悪くなって落ち着かない。

 新幹線や飛行機を利用しないのはお金よりもスピードの問題。遠方へ行くのにわざわざ急ぐ必要があるのか、ぼくは疑問に思う。車窓を楽しみ、ときには途中下車して地元のおいしいものを食べ、おいしい地酒をのどに入れ、共同浴場に入ったりして、ふんわりとした気分で旅したほうがトクじゃないか、とぼくは考えるほうだね。学生時代は駅寝や駅前公園で寝たりしたが、いまは駅前ビジネスホテルに飛び込んだりする。

 奥田英朗の『無理』にはその地方都市のことが書いてある。合併で市になった東北地方の人口12万の小都市にうごめく人間の生態が微細に描写してある。これまでの奥田作品『邪魔』『最悪』には気乗りしなかったが、『オリンピックの身代金』からこの直木賞作家に注目している。深層を抉る社会派作家だ。昔の石川達三や松本清張や山崎豊子や有吉佐和子の小説のように直球ストレートの告発型ではない代わり、しんしんと内臓方面にひびいてくるクセ玉というか、膝元に食い込んできてのけぞるようなシュート小説が得意。

 はい、文庫を待ちきれず単行本『無理』を購入したのです。中央大学生協で1割引きでね。じつはまだ5分のしか読んでないが、これは間違いなく推奨できる本と自信をもっていえる。ぼくはページを繰るごとにこの分残りが減っていくのだな、ともったいない気がして困る。ぼくがいくらローカル線で地方を見ても、その底にゆらめく出口なき人間の実相や内面はわからないからね。これまた一面からみれば小泉政権を頂点とする戦後自民党政治の罪を暴いている。戦後政治が地方にどのような影響を与え、そこに暮らす人間がどのように壊れていったかを知る小説でもある、と感じて読み進めている。

 地方にはしまむらはあるが、定職層のお助け店100円ショップはあるのだろうか。見かけない気がするが。

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寂しがり屋さん
友達の前では少し強がって彼氏なんかいらないって言ってしまうけど、やっぱ本音では欲しいです、夜は寒いし寂しいし私の本音に気付いてください。メアド乗せておくので優しい方連絡くださいtoward.the-future@docomo.ne.jp
【2009/10/24 01:40】 URL | るい #dXGvgaiE [ 編集]


こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
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お気軽にどうぞ。
【2011/06/12 02:01】 URL | 藍色 #- [ 編集]


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「無理」奥田英朗

人口12万人の寂れた地方都市・ゆめの。この地で鬱屈を抱えながら生きる5人の人間が陥った思いがけない事態を描く渾身の群像劇。 合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則―弱者を主張する身勝... 粋な提案【2011/06/12 01:40】

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