ペン森通信
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代表的日本人も忘れられた日本人
 『論座』『現代』『諸君』と月刊誌の休廃刊が相次ぐなかで、『文藝春秋』だけが1人勝ちをつづけている。部数は60万部らしい。最新号の4月号はお得意の昭和特集で「教科書が教えない昭和史」。ぼくの世代はすこぶる興味があるが、ぼくが楽しみにしているのは藤原正彦お茶の水女子大教授の「名著講義」だ。この名著について学生が意見や考えを述べるゼミナールの再録という形式で記述され、今回のテキストは内村鑑三の『代表的日本人』。

 内村鑑三は代表的日本人として、5人の人物をあげ、その言動と内面を表現した。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人である。のっけから学生の1人が言う。「恥ずかしいのですが、私はこの本に登場する5人のうち、最初に出てくる西郷隆盛しか知りませんでした」。西郷以外を知っている学生はごく少なかったみたいだ。

 いまどきの大学生でも二宮尊徳や日蓮上人はお馴染みだろうと勝手に推察していたが、この2人ですら、もはや過去の忘れられた日本人であるらしい。本を読みながら薪を背負った二宮金次郎像が浮かぶ旧世代としては、まさかという感想を抱かざるをえない。前にも書いたが、61年にケネディ大統領が尊敬する人物として上杉鷹山(ようざん)の名をあげたとき日本人記者はみんな「鷹山Who?」だったというから、記者も当てにならない。

 ケネディが上杉鷹山を知っていたのは、『代表的日本人』に依ってである。内村鑑三はこの著作を英文で書いた。「日本人を世界に向て紹介し、日本人を西洋人に対して弁護するには、如何(どう)しても欧文を以てしなければなりません」と言っている。内村鑑三と同じキリスト者で札幌農学校(北海道大学の前身)でクラーク博士の感化を受けた新渡戸稲造も『武士道』を流麗な英文で書いた。

 新渡戸稲造は五千円札の肖像で知られる。この有名人物「にとべいなぞう」を読めなかった北大生がいて話題になったが、五千円札はなぜ内村でなく新渡戸になったか。2人とも、欧米の歴史や文化に深い知識をもった国際人だったが、内村は宗教上の理由から教育勅語への敬礼を拒否した不敬事件を起こし、旧制一高の教職をクビになっている。さらに、足尾鉱山事件で天皇直訴を起こした田中正造を支援し、堺利彦や幸徳秋水などとともに社会運動にもかかわった。それらの経緯が国家にとってはマイナスに作用したにちがいない。

 とまあ、話が横にひろがっていくのがぼくの悪い癖。『代表的日本人』は岩波文庫に収められている。登場人物5人がすべて「徳のひと」であるだけに、心がすがすがしくなる。一読を勧めたい。


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