ペン森通信
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晴天の下にも闇あり
 平野啓一郎『決壊』の下巻のページを閉じて6日日曜日午前10時、京王線多摩川駅で下車した。多摩川の左岸に沿って遊歩道を上流へ歩きはじめると、『決壊』の陰鬱不気味な世界とは見事にかけはなれた開けっぴろげな健康ランドが広がっている。薄日さす梅雨の中休み、それなりに紫外線は強い。

 競輪場の京王閣が近いせいだろう、スパッツを履いた競技用自転車に乗った若者がスピードをだして頻繁に往来している。ぼくのようにのんびりと歩いているひとは目につかない。歩くひともみな競歩選手のような速足である。「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」という交通標語を思い出す。

 河川敷の球場では野球の試合をしている少年たちが何チームもいた。左腕投手の左脇にコーチ?がしゃがんで投球フォームをチェックしている試合を観戦する。バッターの当たりそこねの内野ゴロが1塁側にころがると、左腕が猛然とダッシュしてきて1塁に投げるがセーフ。するとマウンド上のコーチがどでかい声で捕手を怒鳴りあげる。「こらぁ、お前だろうが、なんでピッチャーに任すんだ」。

 捕手はただうつむいている。なにか反論したいのかもしれないが、押し黙っている。ピッチャーだけをえこひいきする1人の大人。捕手の感情はいびつな憎悪に成長して・・・とこれはぼくに芽生えた『決壊』的な疑念。『決壊』は現代ネット社会の病理と人々のこころの闇を鋭くえぐっている。さすがは天才平野を感じさせるが、後味爽快ではない。

 結局、2時間6キロ歩いた。左手首は腕時計の跡が白くくっきり。河原のなかに営巣しているのだろうか、上空ではヒバリが甲高く切れ目なく啼いていて、まことに天下泰平。アキバであんな『決壊』事件が起こった国とは思われないが、ひとの数だけこころの闇はある。晴天の下にも闇はある。

 こんどは上流の鮎の稚魚放流地まで青梅線で遡ってみよう。車内で読むのはさわやか清流のごとき小説がいいな。そんな晴れわたった屈折のない小説は読むに耐えるのだろうか。

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