ペン森通信
朝日VS 安倍晋三が楽しみ
 自民党の新総裁・安倍晋三にとって朝日新聞は天敵である。いや、朝日にとって安倍晋三が天敵かもしれない。自民党総裁は、近いうちに行われるであろう衆議院選挙で第一党になる流れだから、安倍が総理大臣になる可能性はすこぶる高い。安倍嫌いは朝日だけではなく、ぼくも嫌いだ。腹痛(じつは難病)で政権を投げ出したことも一因だが、尖閣をめぐる好戦的というか、勇ましい発言に辟易している。右翼っぽいところが嫌いだ。

 「左翼朝日」の安倍嫌いは安倍の右翼体質もあるだろうが、具体的には2001年にNHKがETV特集で放送した「戦争をどう裁くか」の第二夜「問われる戦時性暴力」について2005年1月12日に自民党の中川昭一と内閣官房副長官安倍晋三が番組に圧力をかけた、と報じたのが大きい。これが政治家の番組圧力、介入として大問題となり、裁判で争う事態となった。ところが事実関係は朝日に分が悪く、書いた記者は左遷された。

 天下のNHKと朝日の対立をはらみながら展開したこのメディア事件は「NHK番組改編問題」として知られる。朝日記者は無断録音をしていたのでは、という疑惑が持ち上がるが、朝日は録音に関する証拠を裁判で提出することはなかった。それは朝日にとってきわめて都合の悪いことだったからである。2004年取材内容のはいったMDの内容が広まったという不祥事があり、無断録音は内規でやっちゃいけないことになっていた。

 面接の録音をしたペン森生もかつていたが、機器の発達でポケットに忍ばせているだけで収録可能となった。そもそも面接選考はどのような基準で行われているのか、採用側は語ることがない。じつに不透明だ。ボイスレコーダーをポケットに入れて面接を受けてどこがいけないのか、と思う。朝日の内規は「事前に相手の内諾を得る」ことになっている。インタビューの場合事前に断るのが礼儀だが、面接で断って録音してどこがいけない。

 面接にボイスレコーダーを隠し持っているとなったら、面接官も緊張するにちがいない。セクハラ面接なんかきれいになくなるだろうし、プライバシーの侵害もなくなるはずだ。
朝日の面接を受けた女子が漏らした。「恋人はいるの?」と聞くんですよ」「はい」と答えたら「やることはやっているんだね、可愛い顔をして、ですって。これってセクハラでしょ!」。「あなた年がいってるな、どうして?」と女子に聞いてきたのは毎日。

 安倍晋三は小泉内閣のとき官房副長官だった。ぼくの記憶によれば、イラクで日本人の19歳の若者など3人が人質になった事件で「自己責任」と最初に冷たく突き放したのは安倍だった。アメリカの国務長官、パウエルは逆に、こういう若者は世の中に必要だと称賛した。ぼくの安倍嫌いはそれ以来かも。安倍は多様性を受け入れない偏狭な人物ではあるまいか。寛容な精神の持ち主でないから尖閣発言に見るごとく攻撃的なのだろうか。

 日本維新の会は早くも失速気味だが、民主党はずっと失速しているから、同じ低空飛行でも自民党安倍政権の流れは変わるまい。政権の交代自体は民主主義の上で好ましい。自民党総裁候補の立ち会い演説を聞く聴衆が中高年老人ばかりであっても、この党に代わるのはよしとする。朝日vs安倍の新しい宿敵構図は見どころだよ。朝日負けるな、とこの際エールをおくっておこう。



 

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田中角栄は土着的醤油派だった
とんかつにソースをかけるなんてとんでもない。醤油に決まっている。醤油をかけるとかみさんは、また醤油かける、ソースでしょと嫌な顔をする。総じて男は醤油派で女はソース派だ。田舎育ちが醤油で都会育ちがソースという傾向も少しはあるかもしれない。ぼくは田舎育ちの男だから、必然的に醤油である。冷ややっこや刺身にはさすがにソースは使用しないが、間違えてソースを用いたことは何回かある。やはり、まずかったね。

むかし読んだ『裏支配』(田中良紹/講談社+α文庫)をふたたび開いていたら、以下のくだりがあったから醤油とソースのことを思いついた。

「食べなさい」と言われて食べ始めると、驚くべき光景を目にした。角栄氏はいなり寿司を醤油につけながら食べ始めたのだ。いなり寿司はすでに味がついているので、そのまま食べるのが普通だ。醤油につけながらいなり寿司を食べる人を初めて見た。
後日、出前の鰻重が出てきたときはもっと驚いた。何と角栄氏は鰻にも醤油をたっぷりかけ、それに蓋をして味をしみこませようとしたのだ。とにかく醤油が大好きなのだ。その後私たちは、醤油がたっぷりしみこんだ焼き飯をおいしそうに頬張る角栄氏の姿を何度も目にすることになる。

筆者の田中良紹はCS放送で国会中継を専門にする「国会TV」の創立者で、TBSの報道記者をしていた。政治記者時代、田中角栄(1918――1993)に食い込み、密着する。「裏支配」とは自民党の今太閤と呼ばれた元総理大臣で、76年に発覚したロッキード事件で有罪判決を受けた田中角栄が最大派閥を率いて政権党を支配したことをさしている。ぼくは筆者には会ったことがあるが、いつだったかはうっすらとも憶えていない。

田中角栄は72年に自民党総裁・首相になるが、日中国交正常化を実現した。抜群の実行力とリーダーシップの持ち主で、3・11大震災の際もし角栄がいたらとぼくも考えた。ロッキード事件は田中角栄がからんだことで「総理大臣の犯罪」と言われるが、米ロッキード社から角栄に渡された金は5億円であった。ロッキード社から右翼の大物・児玉誉士夫を通じてばらまかれた金は55億円。角栄は謀略にひっかかった、という説も根強い。

すでに絶版になったが『毎日新聞ロッキード事件取材全行動』(講談社)という本はぼくがアンカーとなってまとめた。この本は映像化の話が2件あった。最初は東宝。シナリオまでぼくは読んだが、いつの間にか立ち消えになった。つぎは日本テレビ。2時間のドキュメンタリードラマに仕立てるという。ぼくは3日間にわたって、当時の編集局の各部の配置や記者の鞄の種類、筆記用具など細かに取材されたが、これもお蔵入りとなった。

まったくの想像だが、東宝は選挙で大量票を確保して「闇将軍」として政界ににらみをきかせる「裏支配」の角栄や自民党を慮ったのではないかと思う。日本テレビは田中真紀子を意識したのではないだろうか。角栄がソース派でないことだけはよく理解できる自民党暗闘ドラマ『裏支配』だ。醤油は角栄同様、どこか土着的な味がある。



日本人はあいまい民族か
あす22日は秋分の日。えっ、秋分の日って、23日じゃなかったっけ、とぼくは首をかしげた。小学生のころだったから、記憶はきわめてあやふやだが、彼岸の中日だったか中秋の名月の夜だったか、縁側に飾ったススキのまわりに家族がそろい、月を見上げながら団子を食べたものだ。ぼくが小さいころから秋分の日は9月23日で、中秋の名月はそのあとの晩夏か初秋の満月の夜。そよそよと吹く風が心地よかった思いがある。

秋分の日が22日になるのは、閏で調整しているが、1896年以来116年ぶりらしい。道理でぼくと限らず小さいころから23日と思いこんでいるのだ。太陽と地球の位置関係で決まる暦は、太陽の周りを地球がまわるため、毎年一定ではない。「地球から見た太陽が秋分点を通過する瞬間を含む日」。今年はこの瞬間が9月22日午後11時49分という。去年は23日午後6時5分だったから去年は23日。暦は国立天文台が発表して定まる。

情けないことにぼくは秋分の日と中秋の名月の日との体験があいまいなままじいさんになったが、尖閣列島もあいまいなままやりすごせばよかった。「後世の知恵にまかせよう」と中国は先送りの態度だったが、石原都知事が尖閣購入の打ち上げ花火を打ち上げると、あわてて国が割り込んできて、20億5000万円で国有化する。それはどう算出した金額か不明。国有化は、野田民主党の選挙うけねらいだろう。中国も見すかしているはずだ。

野田の「近い将来」の解散時期は「近いうち」というあやふやな表現変更によって、谷垣自民もしぶしぶ受け入れるが、谷垣の総裁選出馬辞退をみて、代表再選前から野田の態度は変わる。前総理管の居座りに倣うかのような態度を見せはじめ、これでは政権の座にしがみつく民主党総理が2代つづくわけで、民主党への絶望感はいや増すだろう。ましてや、30年代原発ゼロは閣議決定せず、拘束力のないあいまいな文言で先送りした。

オスプレイの「安全宣言」なんてのもおかしい。重量ある物体が空を移動する飛行機は基本的に安全ではない。これまでの事故は機体に問題はなく「人為ミス」だったから安全という理屈は、あいまいすぎる。かつて逆噴射墜落事故というJAL機事故が羽田沖であった。着陸態勢にあった旅客機のエンジンを逆噴射させたのは機長だったのだ。これで乗客24人が死亡、149人が重軽傷を負った原因は人為そのものだったのだ。人為は怖い。

中国の半日デモはどうやらおさまったようだ。中国は1党支配だから、上部構造の押さえも効く。半日がいつ反政府に転じるか心配だから押さえにかかった。中国は世界にこれほどカントリーリスクのある国はない、と思われたにちがいない。これでミャンマーやタイやマレーシアやベトナムなどの東南アジアからインドなどの南アジアへの企業進出がいっそう活発になるだろう。中国は『三国志』がおもしろく紹興酒もグー。それだけ。 

中国の資源確保をめぐるアフリカあさりはすごい、とNスペだったか、報じていた。日本でも水源地の森林買収が中国資本によって買収されはじめていると問題になった。「北海道は森林保有企業2141社に2010年調査票を郵送したが当初4割以上が宛先不明で返送されてきた」(吉原祥子・東京財団研究員)。日本にはあいまいやあやふやなままものごとが推移する。日本人はアバウト民族かも、とアバウトなぼくは最近考える。


焼酎のお湯割りから水割りへ
 ぼくは、いまさらだけど、酒飲みだ。酒飲みは総じて腹がゆるい。ぼくもゆるい。焼酎のお湯割りを飲むようになってから、それがピタリとやんだ。どちらかといえば便秘にちかいのだろうが、いかんせん、便秘というのはバリウムで苦しんだ体験がある以外、あまり詳しくない。でも、バリウムは苦しかったなあ、割り箸をけつの穴に突っ込んでほじったり、バリウムを飲むのは恐怖だった。もうずいぶんバリウム経験はないなあ。

 焼酎お湯割り効果でバリウムが不要になった気がする。飲む際、げっぷしないようにとか難しい注文が医師や技師から与えられて、与えるほうは通常の口調で言っているのだろうが、患者?はもっと思いやりのある言葉をかけてほしいと思っている。医者や技師にとっては日常の行為でも、患者?にとってはげっぷ抑制は大変なことなのだ。するなと言われると、出るはずもないげっぷだって出たくなるんじゃないの。げっぷは我慢できないよ。

 便秘ぐせがあると思いきや、1日1回は便意をもよおす。あさ起きぬけに1回だけ、というふうに規則正しくあればいいのだが、これが気まぐれときている。時と場所を選ばないようなところがあるから厄介だ。ぼくはウォッシュレット派だ。和式は大の苦手。しゃがんで立ちあがるとき、なにかつかまえるものがほしいが、それのないものが多い。だから立ち上がるときに力みやふんばりは並ではない。ぼくは左足の弾力が不足気味なのだ。

 加齢のせいもあるだろうが、10年前に入院した脳梗塞の後遺症に悩んでいるのである。
リハビリ治療に週3回通っているが、弾けるような効果はない。いずれ不自由に左足を引きずって歩かねばならないかも、と恐れる。現在でも靴によっては引きずる。杖は買って用意してあるが、引きずりながらも歩けるうちが遠出の機会だ。この連休は南三陸へ、10月初旬は群馬の温泉へ、11月は奄美大島へ。しまなみ海道、五能線の計画もある。

 もちろん行く先々で飲むわけだが、これから寒くなると魚がおいしくなる。それが楽しみ。酒の相手がいればなおさら遠出の愉悦も増してくる。だが、いまのところ相手は間に合っている。これはペン森女子たちのおかげ。介護師、看護師、酒や馬鹿話の相手をかってくれるから付き添いには恵まれている。焼酎を仕入れて部屋で一献。お湯も準備してあるし、その場でへなへなになっても電車に乗ってうちに帰る心配は不要なので安心立命。

 焼酎のお湯割りの欠点はむせることだ。むせると余計に老人くさくなる。だから、このところ水割りに替えつつある。氷を必要としない常温が最もいい。するとだんだん飲みすぎるようになった。お湯割り2杯で肝臓の数値もよくなり、酒は百薬の長だと喜んでいたが、自制はきかず、濃い水割り4杯5杯と増えた。二日酔いこそしないが、毎夜自由のきかない左足を引きずり引きずり、他人に追い抜かれ追い抜かれして帰りつく始末だ。

 水割りにしたら腹が冷えるのか、また緩くなった。途中下車してウォッシュレットがそろっている病院やデパートのトイレを拝借するが、どうしてこうも全体の装置はまちまちなのだろう。きょうは調布でセンサーに手をかざしたら、音姫だった。水洗の取っ手が便座のふたの外にあるのを見つけるまで5,6分かかった。行きつけの病院にはワイドビデのボタンがついている。ワイド! 腹がゆるいと思わぬ発見もある。





民主党は野におけ蓮華草だった
 国会空転、議員は働かないまま会期末。民主、自民ともに党首選だ。新聞もテレビも週刊誌も野党の自民党乱立総裁選のほうに比重をかける。総選挙で民主党の惨敗は明らかで、権力の座から転落し、自民党総裁が次期総理大臣になる可能性が高いからだ。自民党は過半数には届かないが、あらゆる世論調査では第一党になる。連立を組めば自民党総裁が総理大臣だ。日本の大事なリーダーにふさわしい人物が見当たらないこの悲劇。

 3年前、自民党から民主党に政権が移行する選挙速報を観るため、歴史の転換を目に焼き付けようと興奮してペン森生と伊豆高原のコテージを借りた。速報がはじまったとたんに長妻昭の当選確実がでて歓声をあげ拍手したのも、いまとなってはむなしい。あの熱意と期待はどこへ消えたのだろうか。総理になった鳩山由紀夫も管直人も歴代ワースト1・2位を占めた。3代目の野田佳彦ワースト3も原発再稼働と消費増税をしただけ。

 そこへ名乗りを上げたのが大阪維新の橋下徹。テレビのバラエティー番組「行列」で名をあげた橋本のしっぽには長い行列ができているが、行列に並ぶ山田宏、東国原英夫、中田宏などの顔ぶれをみると、へどがでる。この区長やら知事やら市長やらをやった下等な連中がまたぞろでてきた。流れからすると橋下はいずれ総理の目もあるだろうが、大飯原発再稼働で最後にひよった。なんだこいつは、とぼくと同じく怒ったひとも多かろう。

 民主党は政権を担う力はなく、やはり野におけ蓮華草だった。歴史のあだ花にすぎなかった。もはや政権の座に就くことはあるまい。野党に戻って国会で質問しては「じゃお前さんたちはなにをやった?」と冷やかされて立つ瀬がない!!民主党の落選恐怖組は野田の対抗馬として41歳の細野豪志を立てようとした。自分の選挙が危ないから不人気の野田よりは細野のほうがましだ、という打算。細野のキス相手の山本モナもあきれているぜ。

 民主党が6日に発表した「2030年代の原発稼働ゼロ」もポピュリズム。あきらかに女性票をねらっての迎合だ。原発なしでも深刻な受給逼迫は起こらず、計画停電や工場の操業調整にはいたらなかった。大飯原発の再稼働前の政府や経済界や電力会社の脅しで、国民はうそを見破り、選挙前のいまになってゼロとはなにをほざいているの、とまるで信用してない。あの管直人は「25年にゼロ」を主張していた。これはほんとだろう。

 今度の選挙でまた政権交代がある。3年前、あんなに期待して燃えたことがとてもはずかしい。選挙は失望・絶望のなかでおこなわれる。その空気を読んで維新の橋下がのしてきて、橋下への異常接触がみっともない。ぼくは橋下ヒトラー説には同調しないつもりでいたが、弁舌と攻撃性はヒトラーに似てないこともない。ヒトラーも選挙で選ばれて独裁者になった。尖閣や竹島ともからんで、日本が右旋回をはじめるような心配が漂う。

 「今度の選挙は投票するところがない」と、きのうペン森に来た新聞記者が嘆いていた。ぼくは棄権しない代わり、白票を投じるか共産党にいれる。共産党の独善性や誤謬性は疎ましいが、チェック能力には見るべきものがある。共産党は政権に就く危惧はゼロだ。このゼロは原発ゼロ実現より信頼していい。


あきらめな!再出発だ
2,3日の日月は旅に出た。中央線特急「あずさ」→中央線各駅停車→飯田線各駅停車→飯田線特急「ワイドビュー」→飯田線快速→東海道新幹線各駅停車「こだま」→東海道線各駅停車→湘南新宿ライン。在来線、ローカル線、新幹線と列車を乗り継ぎ、たっぷりと乗り鉄の旅を楽しんだのである。出掛けに自室の本棚から文庫本を1冊ひょいととりだしてリュックにほうり、飯田線で開いた。この本を持参したのは失敗だった。

文庫本は『熱球』(重松清/新潮文庫)。どういうわけかところどころ読んでいる。その部分はまぎれもなく記憶していたが、全体のストーリーはまるではじめて。重松作品の例にもれず、これもテーマは家族。40前後の父親と小学上級生の子が主役を張るのも他の作品と変わらない。そういう意味では新味はないのだが、重松はなにしろ小説巧者だ。読ませることにかけては、現代第一級の腕をもっている。『熱球』もその腕が冴える。

物語はふるさと、高校時代、友情、恋愛、旧友、親と子、いじめ、時代の流れ、高齢者、単身赴任、閉鎖社会といった要素をからませながら、最後の最後あと1試合を残して出場辞退で甲子園に行きそこなった20年前の高校野球チームを軸に展開する。語り手の僕が当時のエース投手。チームはツキにツイてあれよあれよという間に夢の甲子園が手に届くまで快進撃するが、選手が女子マネジャーをはらませて2人して傷害事件まきこまれる。

《僕は黙っていた。言葉がどうしても出てこなかった。〈熱球〉ボールを握り、大きくふりかぶって放って、体のバランスを崩してその場に膝をついた。そのまま、もう立ち上がれなくなった。部室では流さなかった涙が、いまはとめどなく頬を伝い落ちる。泣き声ではなく、うめき声が、喉の奥から漏れる。
残り三組のボールも、いつのまにか止まっていた。ボールがグローブの革を叩く音に代わって、また、すすり泣きの声が何重にもかさなって聞こえてくる。僕と同じように膝をつく者もいたし、大の字に寝転がった者もいた。
「くそったれ!」
僕たちの高校野球は、亀山が声を裏返して叫んだその言葉とともに、終わった》

この本を持参したのは失敗だったというのは、泣かせるからである。飯田線は秘境駅で知られそのほとんどの駅は無人駅。駅間が短く、走っては停まり、走っては停まりしながら進んでイ行く。鉄道ファンには有名な路線だが、あまりの停車の多さと山また山の連続にうんざりする。自称乗り鉄とはいえ退屈だ。で、『熱球』を開いたが、まだ昼酒の酔いが醒めていなかったのか、涙腺が緩んでいた。ハンカチで涙をたびたびぬぐう始末である。

こういう泣ける小説は列車読書には不適切。乗客の少ないことに感謝しながら、老眼鏡をはずしては涙をふき、こんな本を持ってきて失敗した、と反省した。感情の起伏作用で涙もろくなる頻度が多くなった。『熱球』の主人公はぼく同様週刊誌のデスクをしていた。38歳。まだ過去にひたる歳ではない。だからこの本の別のテーマは再出発である。失敗しても前を向いて再出発しようぜ、みんな。



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