ペン森通信
行く年来る年、来年はわが年
 来年は寅年。ぼくの6回目の干支にあたる。
ことしは公私ともに不満足な年だった。

 公的にはマスコミ人気の衰退と不況を反映してペン森受講生が激減し、内定者も少なかった。
ペン森の引っ越しも切迫していたが、年越しとなった。引っ越し資金集めのためにペン森債を発行するというアイデアを出してくれたペン森0期生(ペン森がはじまる前のぼくの教え子)がいて、1口3万円で購入を呼びかけてくれた。
すると、卒業生を中心に60人近くから申し込みがあり、目標額の200万円をオーバーする運びとなった。振り込みの一応の締め切りはあったが、ないも同然で、いまだぽつぽつと入金されている。

 冬休みの期間にも振り込みがあるかもしれないと思うにつけ、なんとペン森生はペン森を愛し、存続を希望しているのだろう、と心が引き締まる。この不況下でまことに気高い精神だとぼくは感激ひとしおである。
振込先を知らないひともいるかもしれない。ついでにいっておこうか。
みずほ銀行九段支店(532) 口座番号1414585 セシタケイスケ

 私的には、孫娘と春に秋田へいって卒業生に歓待されたことがうれしかったが、旅友が5年連続の常連1人がいるだけとなったのが哀切きわまる。それにつれ旅行きが極端に少なくなったことが悔しい。まあ、高齢のせいもあって、おととしマイカーを手放したことも大きい。ペン森生とのグループ遠出がまったくといっていいほどなくなった。

 その代わり、むかし楽しんでいた乗り鉄に里帰りした。これはひとり旅がもっぱらでふたり旅には高1の孫娘が応じてくれる。嬉しいことに雪のローカル線に同行して、旅先で雪見酒を、という相手や晩春の能登行きを申し入れているなじみの卒業生もいる。孫娘とも北陸行きを約束したし、来年は旅には恵まれそう。それがわくわくと楽しみ。

 今年の望年会は参加者がわずか10人と、これまでにない閑散ぶりでシャッター商店のわびしさもかくやのありさまだった。公私にわたって金欠という状態は来年も好転しないだろう。金はなくとも志は高く消えないからね。
この冬休みにはペン森の新しいカリキュラムを検討しようと思っている。ペン森を卒業したら、骨のある書き手になってもらいたいから、そのためのカリキュラムね。



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あと2年で自由の身へスタート
 読む前から興奮と感動を予感させる本がある。きのう買った『インパラの朝』(集英社)がまさにそうだった。表紙裏の惹句にこううたっていた。「私は45リットルのバックパックの底に980円のシュラフを詰めた。3日分の着替えと洗面用具、パブロンとバファリンと正露丸を入れた。それからタンポンとチョコラBB。口紅とアイシャドウと交通安全のお守りを用意した。(略)そして、ジムで鍛えた両腕に4本の予防注射を打ち、体重を3キロ増やして日本を離れた」。これを読んだだけでぼくは胸がうずいた。

 作者は79年生まれの中村安希。第7回開高健賞受賞作品であることにあとで気づいた。ユーラシア・アフリカ大陸684日と副題がついている。ルポルタージュである。作者は写真で見ると、涼やかな目をした意志の強そうな怜悧で思索的な美人だ。ぼくは嫌いなタイプではないけど、恋人や妻にするにはあまりにも隙がないから怖そう。でも、ここでこれは関係ないか。ところがこの本は、年末の各雑誌「09本特集」のどこにも載ってない。ぼくが見逃しているだけかもしれないが、話題にも評判にもなってないようだ。

 なぜ話題になってないのだろうか。読んでないからなんともいえないが、筆者に対してぼくが抱いたような感想をもって敬遠された、いまどき珍しくもない海外体験もの、内容がハラハラドキドキの冒険的要素に欠ける、猥雑な場所へ行った割に清涼すぎる文体、若者的な夢見るロマンとほど遠くワクワクしない、簡明単純な筆致ではなく理知的な講釈が多い。これらの理由が当たっているかどうかは知らない。評判になってないという点がぼくにはふしぎだ。そもそもぼくがこの本に惹かれたのは、ぼくが若いときにそのような旅に憧れたからだろう。若いころの自分への郷愁が、読む前から胸キュンとなったわけだ。

 いや郷愁だけでなく、あと2年でペン森を辞めて独自の旅ルポをやろうという気が内面からせり上がってきているせいかもしれない。ぼくは海外には関心がなく、国内に興味がわく。以前、カトマンズからロンドンまで72日間の各国若者のバス自炊旅に参加しようと新聞社に計画書をだしたことがあった。タンカーでアラブへ渡ろうと計画したこともあった。いずれも計画は通らず、実行できたのは国内ヒッチハイクだけであった。浦和から日本海まわりで網走へ。それだけである。2年たって自由の身になったら、ペン森生を青春18切符で訪ねる旅もいいかな、と想像する。もちろん書くためである。社会的なひろがりをもたせるには、赴任先の実態なども参考にし、記者の先行きにも触れたいから飲むだけでなく話も聞かせてほしい。そのときはよろしく頼むね。

 これから来年春までにふたり旅かグループ旅が3つ控えている。ぼくは記録をとらない主義で旅をしてきたが、こんどからは自由の身になったときに備えて、記録をはめねばと思う。73歳からの再スタートにいま興奮し、感動と冒険の予感に打ち震えている。前回のこのブログへの拍手はすこぶる多く新記録だった。

移転を機に考えること
 ご承知のかたも多いが、ペンの森は現在の部屋から、もっとスペースの狭いところへ近々移転する。それに伴い大変革に迫られそうだ。まずいままでのように名物の飲食ができなくなる。作文を仕上げたあと、みんなでテーブルを囲んで、食事をし、ビールやワインや日本酒を飲むというペン森風物は消えてなくなる。いってみれば、政権交代並みのチェンジである。

 いまの場所も事務所仕様の部屋なので煮炊きはできないことになっている。しかし知らぬが仏だった。ここを自ら出て行くのは、ぼくら老人組が年老いてエネルギーがなくなったことに加え、マスコミ人気が衰退したからである。受講生がだんだん少なくなってきて、来春採用試験の受講生は今期からの延長組も含めて12人にすぎない。受講料を厳しく取り立てていない分、収入も目減りして、高額の家賃負担に耐えられなくなった。

 10余年前は、受講生90人を受け入れ、20人くらいがウェイティングしていた。2期生には東京女子大だけで16人もいたのである。ぼくも50代で人生の迫力があり、大晦日と元旦のみ年2日だけ休んだ。ペン森にそのまま宿泊することが常態化しており、つらいときは、昔の兵隊はジャングルの中で寝ていたんだ、それに比べると夜露の心配はせずにすみ、なんと恵まれた環境であり、時代なのだろうと自分に言い聞かせていたものだ。

 兵隊と比較する見方をぼくは内心、結構使う。放浪の天才画家、山下清は「兵隊の位に直すと、あの人は大将」とか、と人物評をやっていたことで知られるが、ぼくの場合は、この男は兵隊にしたら強そう、というふうに比較表現する。過去のペン森の例からみて、兵隊にしたら強そうなイメージの男子学生の内定率は高かった。へこたれないヤツだろうと面接官は受け取ったにちがいない。女子は感じのいいタイプが強いようだ。

 体育会系、肉食系に教養や知性を掛けたタイプはマスコミ就職に有利という傾向はいまも変わらない。感じのいい女子かどうかも含めて、ペン森は作文後のみんなそろっての五合コン風飲食で、だれしも彼や彼女の内定可能性はある程度把握していただろう。相対化に役立っていた、その家庭的な飲食場面がなくなるわけである。仕出し弁当を取り寄せるとか、そういう方法に切り替え、この際、それもよかろうという結論になった。まあ、先方がペン森入居を受け入れてくれれば、の話だが。

 移転を機会に、作文にルポを取り入れることも考えている。外に出て観察し発見して書く、という実戦的な方法を課し、採用試験だけでなく、将来一本立ちするならばそのとき通用する能力も引き出せればと思っている。肉体系や感じのいいタイプにさらに付加価値をつけてあげたい。ペン森は永遠です。互いにがんばろう。



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